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宇宙人東京に現わる


■公開:1956年

■制作:大映

■監督:島耕二

■助監:

■脚本:小國英雄

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:川崎敬三

■寸評:宇宙人も爆発だ!


 本作品は宇宙人の造型があまりにも凄いのである意味、名作。

 ヒトデに目玉がついた様なヘンテコなルックスだけど知能は高い異星人が、地球を遊星の衝突から救うという話です。

 故・岡本太郎がデザインした「斬新な宇宙人の造形」がこの映画の全てといっても過言ではないでしょう。

 自分達の姿があまりにもブサイク(地求人にはそう見える)なのでいくら「地球の危機」を人類に啓蒙しようとしても耳を貸してもらえないと悟った異星人達が「美人の言うことなら聞くかもしれんぞ」という実にプラクティカルな対策を打ち出す「人間臭さ」が笑えます。

 美の基準というのは実に様々で、異星人は人気映画女優を誘拐してその姿形を写し取りなりすますことにします。人間にとって美人でも彼等にとっては嫌悪の対象となる「容姿」なので、「顔の中央の醜い突起物」とか(それは鼻のことなんだけど)「あんな醜い姿になるなんて!」と嘆く様が、SFの古典的テレビドラマの「ミステリーゾーン」のエピソードを思い出させてしまいますね。巨大な直立ヒトデたちの会話は当然、日本語ではないので字幕スーパー付。

 女優のそっくりさんとして人間社会に潜入した「彼女」はテニスのときに地上3メートルくらい飛び上がってスマッシュしたり、壁を通り抜けたり、テレポーテーションしたりします。これがまた実に牧歌的な特撮(なかなかキレイです)なのですが、大映初のカラー特撮映画ということでガンバッタ跡が微笑ましくて好きです。

 超・強力爆弾を開発した科学者・山形勲に「そんなものは人類滅亡のもと!」と説教しておきながら、衝突しそうになった遊星の爆破にちゃっかり利用するという、ご都合主義のかたまりのような異星人たち。火の玉のような遊星が迫ってくるところは迫力があっていいです。引力のインバランスのせいか地震や気温の上昇などで市街地が崩壊するシーンのセットは見事。ただし洪水のシーンはいただけませんでしたねえ。水が、なんかこう、小川がチョロチョロ流れてくるみたいでね。大映の美術スタッフはかき割りを作るは上手だが壊すのは苦手だったんでしょう。

 この映画を見ていると随所にF・ラングの「メトロポリス」に影響されているシーンが登場することに気がつきます。冒頭のヒトデ(エイリアン=パイラ星人)がガラスのボックスのなかで美人にメタモルフォーゼするところは、ロボットのマリアだし、研究所の地下に避難している子供達のところへ浸水してくるところは、地底都市の崩壊シーンに近いものがあります。さすが大映、パクるときも相手は歴史的な名作をチョイスしているところが立派。

 後年、同じ様なテーマで東宝が「妖星ゴラス」を制作します。こっちの地球救出作戦は「ロケット化」という大胆なもの。一度軌道を外れた衛星の悲劇は「スペース1999」状態を危惧させますが、「太陽の引力で自然に元に戻る(というオチだったような気がします)」のでひとまず安心でした。ともあれ、ヘンテコな心優しい異星人の「善意」で地球は無事、衝突の危機を回避。やっぱり人(異星人含む)を外見で判断してはいけないということですね。

1996年11月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16