「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


ハワイの若大将


■公開:1963年

■制作:東宝

■監督:福田純

■助監:

■脚本:笠原良三、田波靖男

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:加山雄三

■寸評:海外ロケが憧れだった時代のアイドル映画。


 かつて竹中直人が形態模写芸人だったころの持ちネタに「マクドナルドの若大将」というのがあった。マクドナルドのカウンターでのセールストークに頭がパニックになった若大将が「どれを食えばいいのかな〜いや〜まいったな〜」と言いながら頭をかく。それを受けて青大将が「なにやってんだよう、早くしろよお」とツッこむ。そこへ「若大将、ガンバッテ!」と澄ちゃんの黄色い声が入って「じゃ、フィレオフィッシュ」と即決する、それだけだった。

 この芸はまさに「若大将シリーズ」のすべてを完璧なまでに表現していると言っていいだろう(他に墓参りに来た若大将が自分ちの墓所がわからずに混迷する「墓場の若大将」というのもあった)。

 なんでもメインタイトルの後ろに「若大将」とつけりゃあいいやという安直な営業感覚。細かいことを気にしない主人公のアバウトな性格。そんな若大将の行動にケチをつけることでしか存在をアピールできないライバルの青大将。そしてどんな困難をも澄子の応援で切り抜けてしまうという強引な筋立て。いやしくも邦画大手の東宝のドル箱だった映画を、わずか30秒たらずの一人芝居で表現してしまう竹中直人の優秀さを感心していいのか、その程度の映画だったことを嘆いたらいいのか、たぶん両方なんだろうが。

 知らない人のために解説しておく。主役の若大将・加山雄三は京南大学の体育会系のクラブに所属しており、実家はスキヤキ屋「たのきゅう」。父親は有島一郎で母は他界している(小桜葉子ではない)。家族は他に妹(途中加入)と祖母・飯田蝶子。クラブのマネージャーには二瓶正也か江原達怡。学友の青大将・田中邦衛は金持ちのボンボンでカッコばっかつけており、若大将とことごとく張り合ったり、トラブルをもたらす。若大将の恋人の澄子・星由里子は身持ちの堅い、融通の効かない美人で、若大将のことを憎からず思っているが「私はそんなにお尻の軽い女じゃないのよ」とばかりに意地を張って仲違いする、が、必ず最後には誤解を解いて、劣勢に陥っている若大将を「若大将!ガンバッテ!」の一言で救出し大団円に持ち込む。

 今回の物語では、若大将はヨット部に所属している。練習中に知り合った澄子はOB・中丸忠雄が勤めている化粧品会社のOL。若大将は遊び惚けてハワイに行ってしまった青大将の父親から懇願されて、彼を連れ戻すためにハワイへむかう。すったもんだがあって澄子に誤解された若大将は息消沈して帰国。ヨットレースでもイマイチだ、そこへ澄子が駆けつけて例のごとく応援一発、若大将は見事優勝するのだった。

 ね、ストーリー解説なんてこの程度のボリュームで済んじゃうんですよ。分かりやすいでしょ。ところで本作品では金欠状態の若大将がアルバイトとしてボートハウスの管理人をやっているとき、そこへ立ち寄った大企業の社長役で上原謙が顔を見せる。社長の目の前でカッコイイ活躍をした若大将に「素晴しい青年だねえ、父親の顔を見てみたいものだ」という楽屋オチ的なギャグをかまして観客を喜ばしてくれる。

 劇中に必ずといって言っていいほど挿入されるダンパ(ダンスパーティー)と最後の祝勝会で加山雄三の歌を聞くことができる。このシーンには時たま近所のギター狂の若衆として寺内タケシが出たりするので油断ができない。「ハワイの若大将」は同シリーズの人気が安定期に入ったころの作品である。したがって予算を増やしてもらった証に、初の海外ロケを敢行している。

1996年11月11日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16