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エレキの若大将


■公開:1965年

■制作:東宝

■監督:岩内克己

■助監:

■脚本:田波靖男

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:加山雄三

■寸評:寺内タケシが主役ではありません。


 昔、ワイドショー全盛時代は芸能界のゴシップというのは番組のメインメニューであった。

 さる番組で「芸能人のスピード離婚」の話題が出たとき、歴代最短離婚カップルのフリップが画面に登場した。その時、ダントツ一位だったのが「江角マキ子&霧島ローランド」の90日を凌ぐ「星由里子&横井英樹の倅」の82日という記録であった。ところがこの番組のメイン司会者が星由里子であったためにレポーターはその「輝かしい記録」には一切言及せず番組は進行していったのである。その時スタジオにはりつめた緊張感は、ネタになった芸能人の名前をまったく記憶にとどめないほどのモノであった。

 司会者の人選には細心の注意が必要である。では本題に入る。

 実家のスキヤキ屋が財政難と知った若大将・加山雄三は仲間を集めてエレキバンドを編成し「GO!GO!エレキ合戦」に出場する。若大将のバンドにはエレキの神様・寺内タケシが加入している。ズ、ズルイぞ!若大将。でもギターが青大将・田中邦衛黒沢年男というド素人ばかりなので許してやることにする。

例によって例のごとく、ジェリー藤尾に脅された青大将がコンセントを抜いてしまうが寺内タケシがさっさとはめて事なきを得るのだった。ジェリーひきいるバンドを下して見事に優勝した若大将たち。番組のスポンサーの令嬢が若大将に興味をもって話しかけた。それを浮気と勘違いした澄子・星由里子がヤキモチを焼いてあわや破局か!と思わせたが最後は誤解が解けてメデタシ、メデタシ。ああ、なんて単純な映画なんだろう。シリーズものって大体、そういうものだけど。

 でもってこの映画でなにがスゴイって言うと、そりゃもう「エレキ合戦」のシーンにトドメをさす。

 これはアマチュアバンドの勝ち抜き戦なのだが何故か審査委員長が久慈あさみ。宝塚とロック、、、よくわからんぞ。そいでもって司会者がロケンロール・内田裕也。頭髪は今のようなボヘミアンではなくいわゆる「七三分け、ちょっと長髪」という60年代バリバリである。裕也がマイクをもっているとついつい「コミック雑誌なんかいらない」のアグレッシヴなレポーター役を思い出すが、これは若大将映画だ。裕也はジェリーの素晴しすぎるアチャラカ芸にも怒り出すことなく(あたりまえだが)ニコニコと相槌を打っていた。内田裕也の「その後」の大活躍を誰がこの時点で予測できたであろうか。いやあ実に貴重な映像資料だ、ってちがうか。

 この映画でも相変わらずマドンナ・澄子の性悪ぶりが目に余る。

 青大将に叶わぬ恋を仕掛けて、若大将の気を引こうとする手練手管は年増女のそれである(そ、そこまで言うか)。挙句に「ゴメンナサイ、青大将」の一言で済ますという調子の良さだ。そういえば「モスラ対ゴジラ」でも文明人の核実験をテンとして恥じず「モスラ貸してちょうだいよ」って堂々と要求していたっけ。そんな澄子にイチコロの若大将ってなんだかすごく間抜けだ。

 でも、それを補って余りある加山の「何にも考えていないような、おおらかさ」が若大将映画の魅力の全てであると言ってよい。

 「君といつまでも」が登場した映画。ほかにブルージーンズと若大将のセッションあり。

1996年12月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16