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やま猫作戦


■公開:1962年

■制作:東宝

■監督:谷口千吉

■助監:

■脚本:関沢新一

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:佐藤允

■寸評:谷口千吉版「独立愚連隊シリーズ」


 本作品は「独立愚連隊シリーズ」と一応、呼ばれているが前後のつながりは全然なく、ただ出演者が似たり寄ったり、である。強いて共通項目と言えば、中丸忠雄が敵役かまたは一見敵役に見えるけど実は善玉だったりする、ということ。

 太平洋戦争末期の中国戦線。佐藤允は敵前逃亡した部下を射殺できなかったために昇進の道を断たれ、今ではスパイもどきの仕事をさせられている。佐藤のいる大隊に赴任してきた若い下士官・夏木陽介は佐藤のうさん臭さに抵抗していたがゲリラの基地を全滅させるべく潜入する過程で、佐藤の知的且つ勇猛果敢な戦いぶりに次第に惹かれていくのだった。頭がパーの農民に化けて巧みに砦に潜入するが親日派を吹聴していた中国人の大人・田崎潤が実はゲリラの隊長と分かり、一行は一気にピンチに陥る。ニセの報告書で誘き出された味方の大隊に行く手に迫るダイナマイト!

 タイトルから容易に推察できるようにこの作品は岡本喜八監督の「独立愚連隊シリーズ」のカラー版であると考えてよい。激戦を極めた北支戦線での中国ゲリラとの対決。岩山で展開する銃激戦はまるっきり西部劇だ。はみだし部隊の兵隊で砂塚秀夫が達者なオトボケ味を出していて良い。個人的にはもう少し垢抜けたミッキー・カーチスの方が好きだが本作品には登場しない。岡本監督のようなモダンさはないけれど、よりハードで男臭さというのが谷口監督の持ち味だから、ミッキーさんは出てもきっと浮いていただろうな。

 なくてはならないギャグメーカーの沢村いき雄は慰安所のオヤジで登場。このテの戦争アクションでこの人の姿が見えないとけっこう寂しいのでクレジットに名前を発見したときは正直、嬉しかった。この映画には万年青春オヤジの夏木陽介の他に、パッと見が加山雄三と高橋悦史を足して二で割ったような感じの伊吹徹が登場する。伊吹は当時の東宝の新人俳優だがこの後、私が最後に彼の姿を見たのは「メカゴジラの逆襲」でブラックホール第三惑星人として地球制服を企んでいた姿だった。今何しているんでしょうねえ消息を御存じの方がいたら連絡ください。

 佐藤允は大隊長・中丸忠雄と反目しているが実は二人は同期。佐藤の代わりに部下を射殺した中丸のほうが隊長に昇進したといういきさつがある。佐藤が命懸けでゲリラの砦を破壊し敵の銃弾に倒れたところへ遅まきながら本隊が駆けつけるが佐藤は恋人の水野久美とともに死んでしまう。ここで、な、なんと中丸忠雄が泣くんだね、これが珍しいことに。どっちかっつうとこの人は喜怒哀楽があまり表面にでない役が多かったからちょっと驚きましたね。

 佐藤允が夏木と伊吹の兄貴分でそれこそスーパーマンのような大活躍を見せる。セットといい、佐藤允の設定(無精髭の生え具合まで)といいあきらかに「どぶ鼠作戦」の姉妹編だ。同時進行で撮影したんじゃないの?と思えるくらい。それだけ人気シリーズだったということか。しかし東宝ってシリーズ作品が好きだな。柳の下にドジョウを何匹でも放り込むという営業センス。本作品も男性アクション映画の第一人者である谷口監督を起用していながら、岡本監督の作風をそっくり流用してしまわせるところに同社の営業方針を実感せずにはおれない。

1996年11月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16