あの丘こえて |
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■公開:1951年 ■制作:松竹 ■監督:端穂晴海 ■助監: ■脚本:端穂晴海 ■原作:菊田一夫 ■撮影: ■音楽: ■美術: ■主演:美空ひばり ■寸評:ひばりの「アルプスの少女ハイジ」 |
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とてつもなく老けた大学生を出すのは若大将シリーズだが、本作品も鶴田浩二に半ば強引に詰襟を着せてしまう。んなことさせるから鶴田さんやめちゃったのよねー、松竹。 信州の山奥の牧場でおばあちゃんに育てられた美空ひばりは東京の裕福な親戚の家に引き取られる。最初は都会生活にとまどっていたひばりだったが、新しい家族と優しい家庭教師・鶴田浩二に励まされながらしだいに馴染んでいく。家人の薦めでお嬢さん学校に入学するがズーズー弁丸出しの彼女はしょっぱなからコンプレックスに苛まれる。だがそこは良家の子女が集まる名門私立であるから「いじめ」といった陰惨なストーリーなんぞは展開しない。同級生達にひばりの純朴な人柄はすぐに理解された。 ひばりの養父が事業に失敗したらしい。健気なひばりは、夜の街で花売りをしている友人の手伝いをして家計を助けることにする。イマイチ売れ行きの悪い友人を助けるために「オラ、歌ぁ歌うだ」と言って見事な歌唱を披露。たちまち人気ものになる。 大学生という設定の鶴田浩二がお行儀の良い演技を見せる。詰め襟姿なのだが、本人がちょっと照れてる、ていうか相当に嫌そうだ。 瀟酒な豪邸に住んではいるが、豊かな自然に囲まれた牧場が恋しくなってしんみりしてしまうところが実に「ハイジ」している。冒頭の美空ひばりの親しみやすい田舎娘然とした風貌が、都会暮らしでだんだん垢抜けていくところは見事。 今流に言えばこれは「アイドル映画」であるから、当時の松竹の代表的な二枚目であった鶴田浩二は刺身のツマみたいなもんなのだが、真面目につきあっている。ひばりは年齢差(当時、ひばり14歳、鶴田27歳)を超越して鶴田浩二を慕う役柄であるが、大人顔負けというか全然違和感なく「恋心」を演じてみせるとろがすごい。 映画そのものは「ハイジ」の邦訳映画であるし万事、善人だけが登場するオママゴトのような筋立てなのだがちっともクサくならないのである。ひばりの庶民的な顔立ちがこまっしゃくれた印象を与えないので素直に鑑賞できる。それどころかクラスメートに「おばあは、オラが悪さすっと物差し持って追っかけてくるだ」と遠くを見つめるような目で話すとき、なかなか心を揺さぶるモノがあって素晴しい。おそるべきはひばりの演技力である。 それこそ数え切れないくらい存在する「ひばり映画」の中では小品ではあるが、ひばりの素直な演技と素晴しい歌唱が楽しめる、ほのぼのとした作品。 (1996年12月05日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16