日本橋 |
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■公開:1956年 ■制作:大映 ■監督:市川崑 ■助監:増村保造 ■脚本:和田夏十 ■撮影: ■音楽: ■美術: ■特撮:的場徹 ■主演:淡島千景 ■寸評: |
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ファーストシーンにラストシーンを見せるというのは映画の手法ではたまにあるが、本作品でも重要なシーンとなっている。 淡島千景は当時の女性としては長身(159Cm)である。頭も小さいしプロポーションもいい。本来なら和服は似あわないような気がするが、立ち居降るまいの見事さと姿勢の良さ、着付けの粋さで圧倒的にカッコイイ。対する山本富士子もかなり洋風であるが、映画の後半、年増女の落ち着きと優しさを醸し出して素敵だ。旦那衆のお座敷で美しさと粋さを全面に押し出して対決するときの二人に息を呑む。何一つ暴力的な振る舞いはないのに、それは偉丈夫同士の壮絶な殴りあいを見ているような迫力だった。 新派の舞台のように幕が上がるとそこは薄暗い石畳の路地。青白い芸者(幽霊)の後ろ姿が高下駄の音だけを残して消える。人気のない格子戸がカラカラと独りでに開いて、、というホラーな立ち上がり。つづいてパッと明るくなり、画面は白昼。虫を追い払いながら鯔背な芸者の淡島千景がフレームに入る。生者と死者とを交錯させ映画のクライマックスを暗示させた見事な導入部。 ラストシーンが冒頭に来る映像の構成方法はよくあるがこれもその一つであるといえよう。美しい芸者の山本富士子に片思いの医学者・品川隆二が、旦那に操を立ている山本にフラれる。それを見ていた芸者・淡島千景は山本富士子にライバル意識ギンギン故に品川に惚れてしまう。ところが淡島千景にはかつてソデにした北海道出身の赤熊・柳永二郎と呼ばれる男が付きまとっており、彼もまた山本に振られたところを淡島に拾われ、結局は食い物にされ再度捨てられていた。 この四人の男女に共通しているのは「家族運の薄さ」である。苦学の末、医師になった品川には自分の学問のために芸者になって行方不明になった姉がおり、山本も家族のために芸者をしており、柳は貧乏の末に子供を残して女房に先立たれる。向こう気が強い淡島も質の良くない親戚のものにタカられているという具合だ。淡島千景と一度は深い仲になった品川隆二だったが哀れな柳永二郎に懇願されついに彼女のもとを去る。ショックで発狂した淡島千景を世話していたのはいちばん可愛がられた若い芸者・若尾文子だけだった。 ある日、山本富士子の家が火事になる。取り残された赤ん坊(実は柳永二郎が捨てた子供)と母親を助けた柳永二郎はその足で淡島千景の家に行き、家人を殺害するが、さらに淡島の襦袢を着ていた若尾を誤って刺してしまう。正気にもどった淡島千景が柳永二郎の口に日本刀を突っ込んで惨殺する。警官の前ですっかり観念した淡島千景は駆けつけた品川隆二に看取られながら硝酸をあおって自殺する。 二人の女優の品格と美しさと粋さの競演。かき割り感覚の背景や、印象深い石畳の路面、繊細な小道具の数々、当時の大映の美術スタッフの真剣勝負も堪能できて実に贅沢な作品である。本作品で特殊撮影を担当したのが後に円谷プロで活躍する的場徹。ちなみにこの作品の助監督はあの、増村保造。 (1996年11月11日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17