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直撃!地獄拳


■公開:1974年

■制作:東映

■監督:石井輝男

■助監:

■脚本:石井輝男

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:千葉真一

■寸評:お笑い空手映画の金字塔。


 馬鹿ハリウッド映画では忍術とクンフーの区別はない。それはこの映画でも同様だ。

 竹薮を飛び超えるよう父・甲賀白雲斎(非常にインチキくさい、水島道太郎)に命令され、最初は馬鹿にしていたが、同じ高さにしつらえられた「真剣」にビビる幼少期の千葉真一下沢弘之、現・真田広之)のツラく厳しい、そして大変バカバカしい忍術修行のシーンからこの映画は始まる。

 忍者のくせにヌンチャクを振り回したり、極真空手の「ンッハァ〜」という呼吸法を鍛練する。

 外交官の令嬢が持ち込むマフィアの麻薬密売を食い止めるべく、組織された6人の刑事と佐藤允。だが、令嬢とマフィアの手先の津川雅彦(役名/マリオ水原)に付き添う日本語の達者な外国人の用心棒達に皆殺しにされる。

 責任をとって辞任した警視総監の池部良。懲戒免職にされた佐藤允は、殉職したにもかかわらず警視庁の隠蔽工作のため行方不明扱された6人の刑事を弔うべく、殺し屋となり、得た報酬を名前を隠して遺族達に送るという「あしながおじさん」をしていた。

 池部は甲賀忍術の使い手で探偵業を営んでいる千葉真一と、大量殺人を犯した死刑囚の郷英治、それに佐藤允を召集し非合法な手段で殉職した部下の救済運動に乗り出す。池部良のプランというのは、マフィアの麻薬を横領し、海外で換金して救済資金に充てるというものだった。日本への麻薬の流入が食い止められ、しかも金になるというナイスな計画だ(ちっとも良かねーよ)。

 最初は協力を渋っていた郷英治は、池部の姪の中島ゆたかの色気に負け、千葉真一は総額200億円という報酬に目が眩んでしまい、佐藤允の指揮のもとに作戦を開始する。後で加わるのが日本のドラゴン・倉田保明

 佐藤允が「仕事は堅い男なんで」と、岡本喜八監督の「暗黒街の顔役」まんまの風情で名和宏室田日出男を殴り殺す。特に室田は額を殴られ片目が飛びだし、さらにもう一撃食らって両目が飛び出すという、物凄い姿で「笑殺」される。

 この映画ですごいのはマフィアチームの殺し屋たちだ。そのマフィアのボスの別荘は、どうみても伊豆か下田の近辺にしか見えないロケーションであるにもかかわらず、強引に「ニューヨーク」とテロップが出る、胡散臭い場所にある。そこで繰り広げられる用心棒達の武術鍛練。

 シシリアンレスリング(なんじゃそりゃ?)のローンウルフ(安岡力也、イタリア人)は練習中にエキサイトして相手の耳を噛り取る。そこへ現われたのは、試合中に7人も殺したためボクシング界を追放された元プロボクサーのブレイザー(稲妻)西山(西城正三、本物)。彼の場合は、「7人殺し」という最終結果よりも、6人も殺してなお現役だったという事実のほうが仰天しないか?鬼虎さんか?!オマエは!

 とりあえず、千葉真一がお得意の空手殺法でマフィアの外国人用心棒達をハデに倒すのがこの映画の見せ場だ。武術の達人である用心棒達は、「英雄色を好む」の格言通り、例外なく女性と情事の最中に腰タオル一丁とかバスローブ姿の状態で千葉ちゃんにボッコボコにされる。相手の女性は必ず素裸でとばっちりで僕殺されるか、千葉ちゃんにのしかかられるかどっちか、という気の毒な目に遭っていた。

 シシリアンレスリング、全アラブ空手チャンピオン、必殺ガンダーラ拳法、元ジュニアフェザー級チャンピオン(これは本物)、、、バーチャファイターよりはるかにいかがわしい連中だ。そいでもって主人公は甲賀忍法の忍者だ。仲間は元刑事の殺し屋と、好色で粗暴だが根はイイ奴(そんなやついるか?)の死刑囚。これは日本格闘技映画史上、他の追随をまったく許さなかったミラクル・お笑い・カンフー映画なのだった。

1996年10月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16