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悪名一番


■公開:1963年

■制作:大映

■監督:田中徳三

■助監:

■脚本:依田義賢

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:勝新太郎

■寸評:おなじみの朝吉と清次のアブソリュートリーな慢遊記。


 「この世にノッポとデブがいる限り喜劇は不滅である」という言葉があるが、けだし名言である。

 元「兵隊やくざ」だった朝吉・勝新太郎は靖国神社にお参りしようと清次・田宮二郎を誘うが、清次がこれを「辛気くさい」と拒否したために、いつものとおり仲違いをしてしまう。

 ありもしない投資話で貧しい人々から金を巻上げて行方をくらましている金融会社の社員の捜索を頼まれた朝吉。ところがこの社員は単なる手先で実は被害者だと判明。本当に悪いのはやくざ・名和宏と組んだ金融会社社長・安部徹だという事実を掴む。そして毎度のことながらこの悪徳金融会社に住み込みの運転手兼用心棒として雇われている清次の活躍で真実が暴かれ、やけくそになった悪者達を前にして朝吉と清次のコンビが復活し、みごと粉砕するのであった。

 弱きを助けて強きをボコる、名コンビはいつも冒頭にささいな理由で(実にくだらない意地の張り合いから)喧嘩になり別行動をとるのがこのシリーズのお約束だ。

 虐げられている人々の苦境を黙って見逃せない朝吉が腕と度胸で敵地へ乗り込み、正体を見破られてボコボコにされ幽閉されている清次を助け出す。大乱闘の最中「一緒に靖国神社、お参りしまひょな」という清次の言葉に「グッときた」朝吉が熱い握手を交して仲直りし(当然だが相手のチンピラ達は黙って待機している)、名和宏と安部徹をロープでぐるぐる巻にして表へ放り出す。一網打尽とはこのことさ!

 お決まりのパターンをどんなふうに見せてくれるかが毎回楽しみだが、今回は「靖国神社参拝問題」のいざこざからスタートする。これを見た観客に勝新太郎のもう一つの名物シリーズだった「兵隊やくざ」を思い出させようとしていることは明白だ。

 真面目一徹の朝吉に対してスチャラカでイカす田宮二郎のコンビがとても楽しい。同様のテイストは「月影兵庫」の近衛十四郎と品川隆二に近いものがある。大人物の旦那と軽佻浮薄な旅人のカップルとは違って「悪名コンビ」の両者には決定的な優劣は存在しないので、より親近感が湧こうというものだ。

 この「悪名一番」は第8作目でマンネリ最盛期(って言うのかな)の作品だがテンポもいいしコンビもよくこなれていて面白い。悪名シリーズは全部で16作。最初の2作と最後の16作以外は「マンネリ」と揶揄されることが多いが、他の作品もなかなか「寅さん」的な味わいがあってそれなりに楽しめるのでどれを見ても大ハズレはないから安心して見よう。

1996年10月30日

【追記】

2010/06/08:「悪名一番」公開当時、まだ「兵隊やくざ」は封切られていないというご指摘をいただきました。ありがとうございました。以下の通り修正いたします。(原文はそのまま残します)

誤:これを見た観客に勝新太郎のもう一つの名物シリーズだった「兵隊やくざ」を思い出させようとしていることは明白だ。

正:後年、これを見た観客が勝新太郎のもう1つの名物シリーズだった「兵隊やくざ」を思い出すのは明白だ。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-06-07