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野性の証明


■公開:1978年
■制作:角川映画
■製作:
■監督:佐藤純彌
■助監:
■脚本:高田宏治
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:高倉健
■ワンポイント:角川春樹が首を吊る。


 東北の山中で奇病におかされた男が大量殺人事件を引き起こす。偶然、付近で特殊訓練をしていた自衛隊員・高倉健が遭遇し、男を殺害する。事が公になることを恐れた政府は、生き残った少女・薬師丸ひろ子を引き取って逃亡生活を送っている自衛官の暗殺を計画する。

 隠遁生活を送っていた高倉健と薬師丸ひろ子は政界の黒幕が関与している砂利採取場をめぐる汚職事件に巻き込まれてしまう。平和な日々は破壊され、警察と自衛隊に追い詰められた高倉健。薬師丸ひろ子を殺されて遂に彼の抑えていた「野性」が爆発する。迫り来る戦車隊に向かって一人立ち向かっていく高倉健。

 たかが一人の人間を殺害するために戦車まで繰り出すなんて荒唐無稽も甚だしいが、高倉健がランボーみたいな設定なのと、少女が事件のショックで記憶を失っただけでなく予知能力を備えているので、このような大がかりな捕り物絵巻になった、ということらしい。「秘密裏」に殺害しようとしてる割りにはとにかく、やかましい映画である。

 高倉健は人目を偲んで生きているのだが、そこへ押しかけ女房のように出しゃばってくるのが、日本映画史上屈指の高ビー女優・中野良子。彼女は件の大量殺人事件のとばっちりを受けたハイカーの双子の妹にして新聞記者。かの「××記念館」でお馴染みの政界の大物をイメージさせる三国連太郎が絡んでいる汚職事件を追っている。

 政界ゴロの三国連太郎の一人息子・館ひろし、ものすごい親子である。息子は暴走族。三国の手先のやくざの幹部・成田三樹夫。片棒かついでいる刑事・中丸忠雄で、土建屋のオヤジ・梅宮辰夫。冷酷な幕領・丹波哲郎。高倉健を追っている刑事・夏八木勲

 全編いかにショッキングに登場人物を葬るかについて趣向をこらした映画である。汚職の証拠を握っている地元のばあさん・北林谷栄は首吊り自殺に見せかけて殺される。しかも鼻水がびろろーんと垂れ下がった状態で、である。成田三樹夫の頭には斧が突き立てられ、中丸忠雄は機関銃で蜂の巣。高倉健を追いかけ回す自衛隊の隊長・松方弘樹(殆どやくざ)はヘリコプターの上から機銃掃射に夢中になってそのまま岩盤に突っ込んでもろとも爆死。

 大量殺人を引き起こした男が実は自分の父親であることを思い出した薬師丸ひろ子は、目前でその父を殺害したのが高倉健であることを知り、ショックを受ける。薬師丸の責めるような視線に耐え切れず、自衛隊とのチェイスも本格化してきたので、高倉健は薬師丸ひろ子を逃がそうとする。が、別れ切れずに後を追ってきた、薬師丸ひろ子も松方弘樹の銃弾に倒れる。

 残虐シーンが多い中で、バースデーケーキを落っことしてしまい、メソメソする薬師丸ひろ子を「へーき、へーき、美味しいよ」と言って高倉健が慰めて一緒に食べるシーンはほのぼのとして印象深い。

 薬師丸ひろ子はこの共演で高倉健のファンになってしまい「女優になる!(当時14歳)」と決心したそうだが高倉健に「学校をちゃんと出てからでも遅くないよ」と言われ、大学進学を決意したらしい。玉川学園大学で彼女とクラスメートであった者は直ちに高倉健に感謝すべきであろう。ありがとう!健(明治大学卒)さん!

1996年09月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16