盲獣 |
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■公開:1969年 |
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江戸川乱歩の原作による映画が成功するかどうかは、監督の「悪趣味」レベルの高さが勝負の分かれ目となろう。石井輝男、井上梅次、そして本作の増村保造。この三人の「達人」達による作品はいずれも期待していい。何を期待するかはあえて問わないが。 緑魔子は自分をモデルにした彫刻に抱きついて触りまくっている男・船越英二を見て、不思議な衝動に駆られる。翌日、魔子は自宅に呼んだマッサージ師にクロロフォルムを嗅がされて不気味なアトリエに連れ込まれる。マッサージ師は船越英二だった。彼は母親と二人暮しで、父親の二束三文の土地が立ち退きにあい、大金を手にしたので、盲の自分が楽しめる芸術、つまり触覚で「見る」彫刻を作り続けているのだと魔子に告白する。 アトリエには船越がマッサージをしていて触った「女のからだ」の「好きな部分」をえぐり取り、模刻した作品が並ぶ。巨大な足、手、耳、鼻、目、乳房が壁にびっしりと並んだ異常な空間。部屋の中央には超巨大な女の裸体が仰向けとうつ伏せになって置かれている。そのオブジェの(主に乳房付近)で船越は魔子にモデルになってくれるよう哀願する。 最初は懸命に抵抗していた緑魔子が、船越英二に暗闇で(船越には明りが必要ないから)触られているうちに、だんだん気持ち良くなって悦楽の表情を浮かべるようになる。息子が緑魔子に入れ上げすぎるのを心配した船越の母(千石規子=1922年生、船越英二=1923年生、なんて歳の近い親子なんだ)が魔子を追い出そうとしてもみあっているうちに頭をぶつけて死んでしまう。 さて、冒頭からクソ趣味の悪い「裸天国」を散々見せつけておいて、映画はこの後、さらに悪趣味街道をばく進するのである。視力が衰えた緑魔子は船越英二と「触覚」だけのセックスに溺れるようになる。こうなると「猿の××××死ぬまで止まらん」ってやつで、互いに噛みついたり、荒縄で打ちのめしたり、小刀で傷つけあったりという変態セックスへと発展。 そんなことを「飲まず食わず」で続けていたバカな二人は次第に体力が衰えていく。「このまま死ぬより最後に最大の苦痛を楽しみましょう」と誘う緑魔子。船越英二は出刃包丁と木鎚を持ちだし、魔子の腕をザックリと切り落とす。「すごく痛いわ!」(あたりめえだろ、バカ)と「嬉しそうな」魔子。とうとう両手両足を切り落とした船越は自分の腹に包丁を突き立てて、目を見開いたまま死んでいる緑魔子の上に折り重なるように息絶えるのであった。 実に映画の3/4は「巨大裸女オブジェ」の上でサドマゾごっこを続ける二人の変態プレイで占められている作品。「怪談蚊喰島」の按摩に並ぶ、船越英二の熱演。「変態按摩」を演らせたらこの人の右に出るものはおるまい、出たがる奴もいないだろうが。 (1996年09月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16