望郷と掟 |
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■公開:1966年 |
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あの行儀の良い松竹がよく安藤昇を使ったなあと思うのだがどうか?つまりそれだけ「東映っぽい」映画に各社が追随したってことなんだろうか、ね。 2年の刑期を終えて出所した安藤昇は、地元神戸に戻ってくる。安藤は三国人の組長・浜田寅彦に見捨てられた上に情婦・楠侑子も寝取られてしまう。復讐に燃えた安藤は古老のやくざ・殿山泰司、ちんぴら・竹脇無我とその弟分の朝鮮人・砂塚秀夫、金塊の密輸を差配している仲間・渥美清と組んで組長の上前をはねることを決意する。ガソリンスタンドで消火器をぶちまけ、組長一派がうろたえる隙にまんまと6000万円分の金塊強奪に成功する。 組長もヤバイ取り引きなだけに警察に被害届けを出せない。妻子もちの渥美清をしめあげて、ドロを吐かせた組長は、殿山泰司を刺し、砂塚秀夫をリンチにかけた挙句に射殺する。血気にはやった竹脇無我が撃たれ、駆けつけた安藤昇が組長と幹部を射殺。瀕死の竹脇は恋人の元へ向かう途中に死亡。残った安藤は警察に逮捕された。 砂塚秀夫は家族を朝鮮に返すために竹脇と組んで危ない仕事に手を出している。妻子を脅しのネタにされペラペラと口を割った渥美清と違い、最後まで仲間をかばう砂塚。組長の車から逃げ出して「ポクは国へ帰る」と歩き出したところを撃ち殺される。 神戸(劇中ではやくざ符丁で「ベコ」と呼ばれている)の朝鮮人街や港湾労働者の風景がドキュメンタリー風に描写されるところだけが、妙に生々しくてテンポがあるのだが、後はどうもいただけなかった。仁侠、バイオレンス、人種問題、底辺の青春群像、色々と試行錯誤するうちに空中分解してしまったような感じがする。ともかく「盛り上がり」っつうのが全然ないのだ。 常に市井の立場を崩さず、庶民派として評価の高い監督だが、この作品を見る限り、そのセンスはやくざ映画には全然不向きだったと言えよう。渥美清がやたらと「女房子供がいる」ことを強調するのだが、それが全体として浮いてしまった。松竹らしい育ちのよさの現れといえばそうとも言えるし、リアリティがあると言えないこともないが、渥美清のコミカルで達者な演技がやたらと鼻についた。やはりこの人は脇に置いたのでは目立ちすぎてうざったい。 竹脇無我は台詞と台詞のあいだにぽっかりと口をあける癖がある。これがものすごくバカッぽい。元々、線が細い上に、いくら力んで不良言葉を使ってみても、あの「ボンボン風情」のマスクではいかんともしがたかった。 極道の「家庭の事情」がやたらと強調されすぎた反面、肝心な殺陣シーンの迫力はからっきし。安藤昇の硬直演技と貧乏臭い庶民生活がニアミスを起こしてしまった、中途半端な「やくざ映画」もどきの作品だった。主題曲を歌っているのは安藤昇で、これはびっくりするほど上手い、一聴の価値あり。 (1996年09月28日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16