二百三高地 |
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■公開:1980年 |
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作り手の思い入れが先走った映画というのは滑稽である。 日本が最後に勝った戦争、日露戦争における旅順港の激戦をテーマに描く、戦争映画。乃木大将・仲代達矢、児玉源太郎・丹波哲郎、明治天皇・三船敏郎、狂言回しの小隊長・あおい輝彦、その恋人・夏目雅子、金子堅太郎・天知茂、伊藤博文・森繁久弥、やくざ上がりの気風に良い兵隊・佐藤允、ほかオールスターキャスト。 日露戦争最大の激戦地、旅順の二百三高地。トルストイを愛するあおい輝彦の目を通して描かれる、最前線の兵隊やその家族の物語。 息子二人も従軍している乃木大将が、二人の戦死の報を聞き、一人暗闇で慟哭するシーン。もちろん、大将としては大声を出して泣くわけに行かない。ぐっと堪える、涙も嗚咽も。だが手にしたサーベルが、全身の震えを伝えて音をたてる。サーベルが代わりに「泣いている」わけだ。 戦争に「お昼休み」があったというのは初耳だった。当時、ロシアの偉い大将が戦死したとき、日本でもその功労を称えて堤灯行列をしたそうだから、これくらいやっても不思議ではないが。のんびりした時代だったということか。 あおい輝彦の部隊に新沼謙治がいる。この男は貧しい育ちで職業は豆腐屋。戦闘が長期化して部隊の食料が底をつく。新沼は意気消沈する仲間の元へ食料をかき集めて持ってくる。空腹のあまり貪り食う隊員達。やがて一人の隊員が、ご飯に赤いモノが混ざっていることに気がつく。「五目飯でしょ」と言う新沼だが、誰がどう考えてもそれは人間の、兵隊の血である。新沼は戦死した兵隊の骸から、食料を取ってきたのである。気持ち悪がって他の隊員達が吐き出す中で、ひとり黙々と飯を口に運ぶ新沼謙治の姿が逞しい。 瀕死のロシア兵が、情けをかけた日本兵を平然と撃ち殺したり、もちろん戦場なんだから当り前なのだが、一様に「悪者ロシア」でまとめられているので、「加害者ニッポン」(戦争は違うんだけど)の声がかまびすしい最近の日本国内ではちょっと刺激が強すぎるかな。ロシア兵との肉弾戦で動脈を切り裂かれ、絶命した隊長のあおい輝彦の手から、軍旗を託された新沼が、遂に陥落した砦の屋上で快哉を叫ぶクライマックス。長かった戦闘は終わりを告げた。 内地へ戻った新沼は、何事もなかったように豆腐屋に戻り、近所の子供にせがまれてラッパを吹いてやるのだった。これは新沼謙治の映画であったと私は思う。 しかし、何だね、この映画途中で休憩が入るんだけどそこでサ、さだまさしの主題歌が延々と流されたわけよ、映画館で。泣け、そーら泣け!とばかりの、いやもう拷問のようなひと時で、退場者続出で大笑い。 この映画が公開されたときは日露戦争の遺族、関係者も多数存命だったと思うからそれなりに厳粛なつくりなんだけど、特に高齢者の出演者は、礼儀正しいわけよ。だけど、この思いっきり勘違いな歌手のおかげですっかりダサい映画になっちまったな。 (1996年09月12日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16