東京湾炎上 |
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■公開:1975年 |
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この映画の脚本家は濃いが、丹波哲郎はとてもあっさり死ぬ。 巨大タンカーがゲリラにジャックされ東京湾に停泊する。彼等はオイルパニックを引き起こしアジテーション活動をかますべく鹿児島の石油コンビナートの爆破を日本政府に要請する。要求が受け入れられなければ東京湾でタンカーを爆破すると宣言。日本の首都を壊滅させると脅しを入れてくる。さて困った日本政府の首脳が考え付いたのは奇想天外な作戦だった。 日本の特撮技術がいかに素晴しいかについて語った映画、と言えなくもない。なんと映画会社の特殊技術チームを隔離して、彼等の撮影したコンビナート大爆破ページェントの特撮映画を犯人達に見せて騙してしまえ!というのが「作戦」の正体であった。ゲリラ達は爆破現場のテレビ中継を要求してきた。吹き飛ぶ石油コンビナート、アナウンサーの実況中継が悲惨な現状を報告する。 満足気な犯人達。あと少しというところで雨が降ってくる。雨に濡れるアナウンサー。ここで緊張の余りか、カメラのスイッチャーが燃え盛るタンクの映像(ドピーカン)とずぶ濡れのアナウンサーを切り替え損なって放映してしまう。「イマノハ、ナンダ(英語です)」焦った、政府側の交渉役・鈴木瑞穂が「雨なんか降ってないぞ!」と余計なことを言ったため、作り物であることを察知した犯人達がタンカーの起爆装置を作動させる。 タンカーの船長・丹波哲郎でゲリラ・ケン・サンダース、同・水谷豊と息詰まる攻防を展開。ここでは通訳の水谷やケンが日本語ペラペラなので丹波哲郎の流暢な英語トークを期待していると(そんなものするわけないが)拍子抜けするぞ。やけくそになった犯人達と銃撃戦の挙句、丹波は死ぬが、水谷豊は丹波の部下・藤岡弘が放った水中銃の「モリ」によって壁に串刺しにされる。 だいたいやねえ、テレビ局が石油コンビナート爆破のシーンを超偶然に撮影した直後でまだ放送してないから、それ「流用しましょう」っていうものすごいイージーな展開からして、しょーもない映画なのである。さらに、、肝心カナメの「爆破シーン」がさらに悲しい。あんなモンで騙されるなんて奴ら「日本沈没」見てねえな、とあさっての方角で納得してどうする(私だけだが)。 中野監督のなんのヒネリもない単純明快な「ミエミエの特撮シーン(しかも一部焼き直し)」に比べて人情派・石田勝心監督のむせ返るような人間ドラマが対照的である。ゲリラの一員で日本が堪能な水谷豊と丹波哲郎のかけひきは、現在のオカルトがかった丹波哲郎からは想像できないくらいの重厚な芝居。そのわりに死ぬときはアッサリしてるんだけどね。 タンカーの船内と対策本部、それにコンビナートと3極に限定した舞台はなかなか緊迫感があってよかった。これで「爆破シーン」がリアルだったらどんなにか良かったことであろうか。かえすがえすも惜しい作品であった。 (1996年09月18日) 【追記】 ちなみに、本作品は潮哲也の映画デビュー作、らしいです。 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16