忠臣蔵 花の巻、雪の巻 |
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■公開:1962年 |
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時代劇映画があまり得意でなかった東宝の数少ない、っていうかこれ以外には観たことがない忠臣蔵。大石内蔵助・松本幸四郎、吉良上野介・市川中車。 オールスターの忠臣蔵にはいろんな楽しみ方があるとおもうが、私はいつも「浅野内匠頭」で見る。大映は市川雷蔵、東映は中村錦之助、松竹が高田浩吉、そして東宝制作のこの作品は、な、なんと、意外というか当然というか加山雄三であった。 若大将だぜ!あの能天気で短細胞の。浅野内匠頭といえば「忍従」の果ての凶行だからこそ、家臣の無念のボルテージが上がるわけだろう?だがこの加山・内匠頭は結構、些細なことでカチンと来るただの直情径行の馬鹿に見えてしまう。稲垣浩監督と脚本の八住利雄は、そも加山では「耐える美学」を演じるのは無理難題、と諦めたのか「刀傷の場」に至る経緯を、脚本で思いっきりネジ曲げ、吉良上野介の「浅野潰し大作戦」の一環、という設定にしてしまった。それが新味となって、この映画の評価を高めるのだから、世の中は不思議だ。 殺陣で迫力があったのは、清水一学を演じた、戸上城太郎。ボリューム満点の体躯で、三橋達也あたりと豪快な立ち回りを見せる。東映の専属だった戸上城太郎は「時代劇スター日照り」の東宝にいた稲垣浩監督から呼ばれて「柳生武芸帳」において柳生十兵衛を演じた。今回も敵方であるが重厚な演技で印象を残す。 絵画的な他社のカメラに比べると、稲垣監督の本作は、だいぶ荒削りな印象がある。が、ハンディで、目くるめくような殺陣シーンを追いかけるので、様式美にハマりがちな題材が、妙に生々しくて新鮮だった。だいたい、東宝の映画といえばサラリーマンものに代表されるように都会的センスが売り物である。時代劇をレーゾンデートルとしている東映とは、根本的に異なる。したがって、様式美あふれる正統派な殺陣シーンなど期待できるわけが無い。ハンディによる撮影は苦肉の作かもしれないが、結果として本作における、ダイナミックなカメラワークは映画の魅力の一つとなっている。 東宝は最近、市川崑監督で「四十七人の刺客」を作ったが、豪華絢爛たる往年のオールスター時代劇を見慣れている私としては、スカスカに軽い作品に見えた。本当のオールスター映画はもう正月の「長時間ドラマ」でしか実現しないのだろうか。まあ「え?これでオールスターなの?」といった感じのうさん臭いのも多いわけだが。 で、オールスターなので小林平八郎・中丸忠雄もちゃんと出てる。吉良家の用人、小林平八郎役だがこの脚本では臨時雇いの浪人者。ただし、討ち入りをいちばん最初に気が付いた功労者である。三橋達也と堂々と立ち回り、あり。 (1996年09月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17