地獄変 |
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■公開:1969年 |
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悪趣味で残忍な性格の公家・中村錦之助は、絵師・仲代達矢に極楽絵図を描くよう命じるが反骨精神旺盛なこの絵師は庶民が飢餓に苦しむ地獄絵図を献上し「これがこの世の姿」と言う。 贅沢三味の暮らしを皮肉られたと、カチンときた貴族は絵師の娘・内藤洋子を陵辱し車に縛りつけて火をかける。「この世の地獄をとくと見るがいい」と貴族は高笑い。逆上する父親の目前で飴の様に溶ける娘。数日後、貴族の前に幽鬼のようなたたずまいの絵師が現われる。地獄絵の屏風が完成したのだ。 絵師がうけた苦しみが地獄の拷問に変化して生々しく描かれ、思わず息を呑むような迫力。天空を焦がすような炎に包まれて、今まさに地獄へ落ちてきた車に乗っているのは娘ではなく貴族の姿であった。 地獄へ堕ちよ!という呪なのか?「おのれ、痴れ者」と貴族が振り向いた時にはすでに絵師の姿はなかった。絵師はとうに首を括って死んでいたのだった。恐れおののく貴族に屏風の「業火」が襲いかかった。 いやあ、ここまで憎々しいヨロキンは、初めて見ましたね、もう欠片ほどの救いもないっす。 救い難いという点では、絵師の仲代達矢も似たようなもの。 意地の張り合いから娘を犯され殺されて、自らも命を絶つ。二人とも情感たっぷりに大時代な演技を披露してくれるのがいま一つ悲劇性に結び付かないのが苦しいところだ。なんだか「新東宝エログロ」路線を彷彿とさせるなあ。つまりは扇情的なだけで深みがないってことかも。 いつもはキュートでかわいい内藤洋子が、頑固親父と畜生貴族を呪って黒焦げになる姿は迫力満点。貴族が恐怖に盃を取り落としそうになるほど。絵師がやたらと「ウオーッ、ウオーッ」と吠えるので、とても同情する気にはならず「元はといえばお前のせいだ!」と父親を恨んで死んだ娘に大いに賛同の意を表したい。 70ミリ・パナビジョン技術による寄りの歪みのないクリアな撮像も悪趣味の度合が増す程度でイマイチ。中村錦之助の「変態芝居」が印象深いという点を除いては、豊田四郎に芥川龍之介の「人間悲劇」の原作というのは畑違いだったな、という感慨を残すのみ。 (1996年09月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17