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私は二歳


■公開:1968年
■制作:大映
■製作:
■監督:市川崑
■助監:
■脚本:和田夏十
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:船越英二
■ワンポイント:


 歳月は人を待たず。この映画で赤ん坊の声を担当した中村メイ子はその圧倒的なキャリアを武器に、死んだ人のことをペラペラペラペラ喋る「だけ」の人になってしまった。

 「我が輩は猫である」は猫の独白で物語が進行するが、本作品では団地に住んでいる若夫婦(船越英二山本富士子)の二歳の男の子の目を通して、さまざまなエピソードが綴られていく。赤ん坊の声は中村メイ子

 ボクは、優しいお母さんと、そのお母さんに完璧に尻に敷かれている優しいお父さん、おばあちゃんと暮らしている。お母さんはボクの育児のことで悩んだりすると渡辺美佐子おばさんのところへ相談しにいく。渡辺美佐子おばさんのところにも、僕とおない年の子供がいる。大変そうなんだが、額に汗を浮かべて一生懸命おむつをかえている渡辺おばさんがとても幸福そうに見えて、お母さんはとても幸せな気分になったりする。

 ボクがちょっと熱を出すと、おばあちゃん・浦辺粂子は注射ばっかり打ってくれる先生のところへ連れていくので痛くて困る。それにしてもお医者さんて変だ。薬をくれるだけでろくすっぽ診てくれない人や、放っとけば自然に治る、と言う人もいる。その度におばあちゃんとお母さんはオロオロしていて気の毒だ。

 ある日、近所の子供がベランダで遊んでいた。危ないなあと思っていたら、手すりが錆びていたのでその子は落っこちてしまった。その時、ちょうど下に配達のお兄さんがいて、その子を受け止めてくれた。うちのお母さんはそれを聞いてすごく心配してたけど、お母さんの友達の岸田今日子おばさんが「その人、神様よ、きっと」って言ってた。ボクもそう思う。

 お母さんは出かけていて、家にはお父さんだけ。あんまり遊んでくれないから、ボクはクリーニング屋さんのビニールの袋をかぶって、一人で遊んでいた。そのうち気が遠くなって、、。帰ってきたお母さんが、僕を助けてくれたんだけど、お父さん、責任感じちゃってしょんぼりしちゃった。ちょっと気の毒だな、とボクは思った。

 二歳の坊やが、大人の社会を皮肉ったり、いっちょ前に育児評論をかましたり、しょぼくれた親父に同情したり、、。でもしょせん子供、月がバナナになり、さらに船に変身する夢のアニメーションがとてもかわいらしかったりするので一安心(?)だ。

 シナリオの和田夏十(市川崑監督夫人)は、完成試写を見て「カメラが遠慮しすぎよ」と市川監督に苦言を挺したとか。これに答えた市川監督「人様の赤ん坊だもの。ライトのほこり一つ落とすわけにはいかなかった。」と主役の赤ちゃんを、ハレものに触るような気持ちで撮影したことを告白。それじゃあ船越パパと同じだなあ。やはり、ここでも母は強いってことだね。J・トラヴォルタの「ベイビートーク」にパクられた(としか思えません)、この年のキネ旬ベストワン作品。

1996年09月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17