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高校大パニック


■公開:1978年
■制作:にっかつ
■製作:
■監督:沢田幸弘、石井聰瓦
■助監:
■脚本:神波史男
■原作:石井聰瓦
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:山本茂
■ワンポイント:「数学できんのがなんで悪い!」が当時の流行語に。


 思えば、すでにこの頃から日本映画は「頭のおかしなやつら」に占拠され始めていたのではなかろうか?

 九州の地方都市にある高校で、夏休みの補習が行われていた。クーラーなんかない、ムシムシした教室で、頭の悪い主人公の少年・山本茂は、嫌味な数学の教師・久富惟晴に「どうしようもないヤツじゃ」と馬鹿にされていた。突然、教室を飛び出す少年。「ああいうバカは放っとけ」と呆れ果てる教師。銃砲店からライフルと実弾を奪った少年は、数学教師を生徒の目前で射殺する。教室は一気にパニックに陥る。

 ギャラリーである他の生徒の何倍もパニック状態になった少年は、生徒を人質に図書室に立てこもる。教師や親の説得に、実弾で応える少年。警官隊が校舎を包囲する。

 少年は屋上に追い詰められた。その少年に恐れ気もなく従う少女がいた。幸い人目につかない屋上の物置に潜んだ少年と少女に催涙弾が発射される。警察のスナイパーが撃ったのは少女だった。少年は泣きながら警官隊に逮捕される。「補習があるんだ!模擬試験があるんだ!」と喚き散らす少年が連行されて行った。少女の死は「事故」として片付けられた。警官隊が去り、少年が去り、校庭には少女の遺体だけが残された。

 学校というごく日常的な場所がいきなり「コンバット」なみの戦場に変貌していく様が、ジェットコースターの様に一気に描かれている。虫ケラみたいな少年に対して、警官隊を指揮する警部・青木義郎の「大人の男」ぶりが際立つ。誤射した少女の親にも、とりたてて謝罪の言葉なし。

 母子家庭の少女・浅野温子。いつも教室の窓から外を眺めている。少年と二人きりになった後もコワイ顔をして一人で歌を歌い、直後に血染めのセーラー服で横たわる。とにかくこの作品の浅野温子はクールビューティー。

 「IF〜」という、厳格な全寮性の男子校の生徒(マルカム・マクダウエル)が校舎をジャックして機関銃を乱射する映画があった。先の作品は英国製のシニカルな作品。かの地のどんよりした天候が印象的だったが、こちらは南国(九州)製である。どこかぽっかりお天気な映画。画面を覆い尽くすような暑苦しさ、制服の黒いスラックスが肌にまとわりつく不愉快さ。それらすべてが少年を「駆り立て」ていく。

 「数学できんのが、何で悪い〜」と叫ぶ台詞が妙に突出して有名になったが、そんなものはとても些細なトリガーにすぎない。体制への「怒り」なんて陳腐な言葉しか浮かばないけど、当時高校2年生だった私(と同年代の人々)にはとても思い出深い作品。石井聰瓦が原作と共同監督を務めた。

1996年09月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17