江戸川乱歩の陰獣 |
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■公開:1977年 |
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筆者は大友柳太朗のファンだ。ゆえに大友さんツッコミを入れることはあるが、悪口は書かない。 推理小説作家・あおい輝彦は、実業家の妻・香山美子から不思議な相談を受ける。彼女の元に届いた一通の脅迫状には夫婦生活のことまで細かく記されており、香山は神経衰弱になりかかっている。差出人はエログロ小説を書いて一部にカルトな人気を得ていた謎の作家・春泥(しゅんでい)だった。あおいは流行作家へのささやかなジェラシーと香山の美しさにひかれて真相究明に乗り出す。 雑誌の編集者・若山富三郎の話によると「春泥」は絶対に人前に姿を見せず、無愛想な妻が原稿を届けるだけだという。脅迫状の内容から春泥は「屋根裏の散歩者」をやってるらしいと目星をつけたあおい輝彦。香山の邸宅の天井裏で証拠物件を発見。そこへ香山の亭主の大友柳太朗が帰宅する。 江戸川乱歩といえば「悪趣味」。加藤泰といえば「幕末残酷物語」やSF時代劇「真田風雲録」に見られるような斬新で荘重な絵作りが身上。大友柳太朗が碁打ちに興じるシーンに味がある。碁石が碁盤を打つ音が、次第に激しくなってやがてそれが鞭の音へと変わり、田口久美が欲情する。大友柳太朗が外遊中に昌婦・田口久美に「サドマゾ」を「調教」されたイメージを映像化したのであるが、豪放磊落で威風堂々たるイメージの強い大友柳太朗が正真正銘の「変態」に見えてくるからすごい。 場面変わって船つき場。隅田川に突き出た建物の便所に入る菅井きん。ふと便器を覗くと人間の目玉がこっちを睨んでいた。 ぶっ飛んだ菅井は狭い便所でパニック状態に。それは上流で惨殺された半裸の男性の死体だった。おまけにその死体はヅラだった!雨の中、パンツ一丁で中吊りにされる大友柳太朗。 よくできたダミーかな?とも思うがどうやら「本物」。大友は資産を狙った香山にSMごっこの最中に窓からつき落とされたのだった。どうやら大友はコスプレも楽しんでいたらしい。 なんてコトさせるんだ!大友さんに。相手は黒頭巾のオジサンなんだぞ!若山富三郎ならいざ知らず、というかいかにもやりそうだし。ただし屋根から落ちたくらいじゃ、見事にトンボ切って着地しそうだからダメだな。 事件はすべて香山の仕業で、変態作家・春泥の正体も彼女だった。夫の影響で変態になり、その才能を生かして流行作家になった香山美子。夫を殺害し「春泥」の身代わりとして麻薬をエサに操っていた役者・川津裕介をも殺害した彼女はあおい輝彦にすべてを告白して投身自殺をするのだった。崖の上から「身投げした」香山がいかにもウソ臭い「落下」シーンだったのが惜しまれる、加藤泰の乱歩ワールド。 (1996年10月02日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17