鬼畜 |
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■公開:1977年 |
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しかし、なんですね岩下志麻っていつからオカルトになったんでしょう?この映画では子供の芝居をリアルにするためか、休憩時間もお志麻さんのそばに子供は寄り付かなかったそうですが、それって本当に怖かったんじゃないですかね、お志麻さんが。それと、野村芳太郎の映画に出てくる小川真由美っていつも同じ。 貧乏な印刷工場を夫婦と使用人一人で経営している印刷工、竹下宗吉・緒形拳は、工場が火事になって赤貧に転落したところ、金の切れ目がなんとやらで愛人だった小料理屋の女将、菊代・小川真由美に生ませた子供3人を押し付けられてしまいます。非情な女房のお梅・岩下志麻は、腰抜け亭主を罵倒し、子供達にも冷たいです(心情は理解できますが)。ある日、二階で寝ていた一番下の赤ん坊が不注意から死んでしまうという事故が起きます。 偶然だったんですが、一人減って楽になったと心の底で思っているお梅はこの事故をきっかけに、残る二人を「始末」するように宗吉に命じます。真ん中の女の子、良子・吉沢美幸を東京タワーに置き去りにした宗吉でしたが、妹の姿が見えないのを不思議に思った長男の利一・岩瀬浩規は宗吉を責めます。 当然ですがお梅は残る利一も始末するように宗吉に迫ります。二人はなんとかなってもすでに六歳になっている利一だけはと思った宗吉でしたが、お梅の説得というか脅迫に負け、宗吉は利一を旅行に連れ出します。殺人場所を求める最後の旅行へ。 睡眠薬で眠った利一を断崖から落とす宗吉は罪の意識で振りかえることもなくその場を後にします。証拠隠滅工作までしたお梅は宗吉の成功に一安心、ですが事件は意外な展開を見せるのでした。 大島渚の「少年」は共犯により家族の絆が生まれる映画でしたが、この映画は全然反対ですが、断ち切れない血のつながりが生んだ悲劇です。 鬼畜なのはお梅ではなくて、宗吉というところがミソですね。生まれながらの鬼なのではなく、運命のほんのささいなつまづきが、臆病な人間を鬼畜に変えてしまうという、人間社会の日常に潜むエアポケットにハマった人間が人を殺せるまでになってしまう恐怖。 映画終盤の長男の慟哭(ネタバレにつき見たい人だけ[松の枝にひっかかっていた長男は警察に救助されるが完全黙秘、父からもらったあるモノでアシがついて逮捕された宗吉を見た長男は「こんな人知らない、知らないよ!」と叫ぶ。])には、因果な血縁への恨みなのか、それとも苦労人の父への愛情がこめられているのか、意見の分かれるところですが結局はその両方ではなかったかと思います。 婦人警官に大竹しのぶ、パトカーの警官に田中邦衛、リアルな印刷工に蟹江敬三、銀行の窓口係に大滝秀治などかなり渋めのオールスタア映画。 (1996年09月29日) 【追記】2008/10/05 緒形拳さんが亡くなりました。 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2008-10-08