奇厳城の冒険 |
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■公開:1966年 |
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「大盗賊」といい「奇厳城の冒険」といいこういうタイトルにしてどっからもクレーム来なかったんでしょうかね?東宝に。 「乱菊物語」(主演:池部良)、「大盗賊」(主演:三船敏郎)に続く、谷口千吉監督の冒険活劇三部作?の集大成。 遣唐使に同行した日本の学問僧、円済・中丸忠雄はシルクロードを旅して仏舎利(仏陀の遺骨、おしゃかさまの骨)を探していました。寺院建築には必需品であるからです。円済はある町で奴隷として売られそうになっている日本人の大角・三船敏郎を買い取ります。 大角は有名な船乗りでしたが嵐で遭難し、日本では死んだものとされていました。二人はキャラバンに合流して旅を続けますが途中、どこからともなく現われた山賊のゴルジャカ・佐藤允たちに襲われます。一行が逃げ込んだ岩山はかつて寺院として使用されていたらしく、朽ち果てた石塔の下から仏舎利が出てきました。二人は帰国の途につこうとしますが、山賊の襲撃と祟りを怖れたキャラバンが二人を置き去りにして出発してしまいました。 途中のオアシスで、仙人・有島一郎に出会った二人は近郊の町が疑い深い国王・三橋達也の圧政に苦しめられていることを知ります。よそ者は捕えられ牢獄に片っぱしから繋がれており、大角と円済も役人に追われて捕まります。ともかく仏舎利だけは日本に届けたいので、円済を人質にして大角が敦煌まで仏舎利を運ぶことになりました。 敦厚には大角の実弟・黒沢年男が来ていました。王の評判を落として後釜を狙っている腹黒い宰相・平田昭彦(様)は、山賊や妖術つかいのオババ・天本英世に命じて妨害工作を展開します。しかし、仙人が助けに来てくれました。約束を守った大角の友情に王は感激し、宰相と山賊は大角と町人たちが協力して全滅させました。 「走れメロス」をベースにアラビアンナイトと西遊記をくっつけたと考えるとわかりやすいんじゃないですかね。日本人がわかりやすい冒険活劇のミックスです。南洋の国を舞台にした「大盗賊」の舞台を、イランの砂漠にスライドした作品で、監督から主要キャスト(のキャラクターまで)も殆ど同じです。 イランとトルコでロケした砂漠のシーンは当時としてはかなり珍しいし金かかってます。海外ロケを売り物にしていた「敦煌」(1988/佐藤純弥・監督)は「本物の砂漠だぞ!どうだ、どうだ!」と言わんばかりに、騎馬戦のシーンをロングショットで捉えてしまい、せっかく現地のエキストラを大量動員したにもかかわらず、壮大なはずの戦闘シーンがチンケな印象を与えてしまったのに比べ、本作では太陽光線を上手く利用し、陰影のある砂漠の表情を情緒的に捉えてスケール感の創出に成功しています。 お城のオープンセットがチープだったのが痛かったですけど、このセットは「ウルトラマン」にも流用されたんですよね。円谷監督つながりっていうことで実現したそうですけど、やっぱ映画のほうが金かかってますし立場強いんで、休憩時間にさーっと撮って撤収したそうです。 「大盗賊」からこれまた連続出場のセクシーボム、若林映子は悪宰相の娘。前回(注:「大盗賊」参照)は胸の谷間でしたが今回はヘソ出しルックです。いやあ目の保養ですねえ。男勝りのキャラクターは水野久美から浜美枝に交代、これは趣味の問題でしょうかね。 本作品は現代と違って破格の海外ロケですから実は2作品同時進行、もう一本は「ゼロファイター・大空戦」の併映作品「怒涛一万浬」です。なんせどっちも出演者がほとんど同じですし、中丸忠雄は両方とも丸坊主なんでモロわかりです。そう言えば、この(正確にはスペインロケ)ロケ中なんですね、中丸さんが今の奥さんを「ナンパ」したのは、余談ですけどね。 三船プロダクションの制作ですから、社長=三船としては大張りきりですが、なにせもう立派なオジサンですから、こういう馬鹿馬鹿しいというかファンタジーには相当無理がありますよね。分別盛りが何やってんだか?と最初に見てるほうがシラケちゃう。時代的が苦手な東宝でしたけれど、実際はモダンな三船さんなんですけど、それはわかりきってんですけど、やっぱり三船さんには「侍」してて欲しいわけですよ。こういう子供だましなキャラクターじゃなくってね。 それでも自社製作ですから、張り切ってますし楽しそうなので良しとしましょう。 (1996年09月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2008-07-21