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海底軍艦


■公開:1963年
■制作:東宝
■企画:田中友幸
■監督:本多猪四郎
■助監:
■脚色:関沢新一
■原作:押川春浪
■撮影:小泉一
■音楽:伊福部昭
■美術:北猛夫
■特撮:円谷英二
■主演:高島忠夫
■受賞:空飛ぶ海底軍艦


 この映画の原作が明治33年に書かれたものである事を知ったのはわりと最近です。

 伝説のムウ大陸は実は海底王国として生き延び、世界征服を企んでいるのでした。

 太古の敵に立ち向かうのはやっぱりレトロじゃないとね!っていうわけでもないでしょうが、太平洋戦争末期に進駐軍の接収逃れて南海の孤島で密かに巨大軍艦を製造していた元帝国海軍の神宮寺大佐・田崎潤のことを、イカすねーちゃん(実は大佐の忘れ形見)、神宮寺真琴・藤山陽子のケツを追っかけていて知ってしまったカメラマンの旗中・高島忠夫は密かに大佐の居所を突き止めようとします。

 真琴が勤務している会社の重役、楠見・上原謙は元海軍少将。彼は謎のムウ帝国人の挑戦状に書いてあったとおり脅威の海底軍艦の建造中止を、元部下で声のでかい神宮寺大佐に命ずるべく旗中とともに大佐のもとへ。案の定、頑固なタイプの神宮寺大佐は「日本は降伏しても自分は降伏してない」ってあんた職業軍人のくせに何言ってンの?と思われますが、さすが見た目通りのアナクロパワー炸裂でした。

 実は海底に住んでいたムウ大陸人は地殻の変動にともない滅亡間近。そこで地上への進出を企て全世界にムウの強大な科学力を誇示せんと、記録フィルムを送り付けます。ところが余りに荒唐無稽な話なので世界の主要国から一笑に付されてしまいます。ムウ大陸人はこれにムカついて実力行使、海上の船舶を片っ端から撃沈させてビビらせる作戦に出ました。

 調子に乗ったムウ軍は三原山に出現します。ついに重い腰を上げた神宮司大佐は「空飛ぶ海底軍艦・轟天号」へさきのドリルは飾りじゃないぜ!とばかりに地面をバカスカ掘って進撃開始。その最中、神宮司の娘がムウ大陸人の特殊工作員に誘拐されて、半島ではなく海底王国へ拉致されて、海竜・マンダの餌にされそうになります。

 一緒に捕まった旗中はムウの女皇帝・小林哲子を土産に脱出に成功します。まるで「謎の円盤UFO」の月基地にいるお姉さん達のようなスパーキングカラーの頭髪をもつムウの皇帝は、超高ビー。「ムウの心臓は無敵」と威張りますが、その発言のおかげで帝国の「動力室」さえ潰せばこっちのもんだと神宮司にバレてしまいます。皇帝とタメな負けん気の神宮司大佐操る轟天号はムウ帝国へ一直線。

 ノコノコ出てきた帝国の用心棒のマンダはあっさりこっぱ微塵。轟天号の強烈な攻撃を受けてムウ皇帝の目前で海底帝国は壊滅します。ムウ皇帝は滅び行く海底帝国に向かって思いきりジャンプしともに海中に没していきました。

 轟天号の艦橋をドレスをはためかせながら走るムウの女帝の悲壮感がドラマチックです。それを止めずに見送る神宮司の「軍人魂」、ああこの右翼的なオチが東宝特撮のもう一つの特色ですね。

 本作品中唯一登場するモンスターのマンダは「怪獣総進撃」でゆったりと地上の高速道路に巻ついた時のほうがカッコイイんですが、本来は水中のほうが得意だと思いますけれど、なんとなく間抜けでした。「竜」の造形は実に難しいんですよね重力あるし蛇っぽくなっちゃうと難だし、「ネバーエンディングストーリー」のファルコンも飛行しているところはかなり情けなかったですし。

 「水溶き絵の具」のアイデアによる「炎のような水柱」は実は味噌汁だったっていう話ですけど、こういう先達の職人的な細工はレトロでも感心しますよね。

 水(深海)には潜るわ、地面を掘るわ、空も飛ぶという、どんくさい船体なのに実にものすごい海底軍艦・轟天号。あんな時代錯誤もはなはだしいテキ屋の親父みたいな田崎潤(神宮司大佐)、しかも直属の部下が田島義文ですし、よく設計できたものだと思わさせるのがタマに傷?上原謙なら納得でしょうかね、いややっぱこういうシーンには平田昭彦(様)、、、あ、そういえば平田(様)ったら見事な胸毛(つけ毛)のムウ大陸人(佐原健二も)だったんですよね。非理系の平田(様)も珍しいのでよく見ておきましょう。

 ところでムウ大陸の工作員だった佐原健二、偽名が「海野魚人」それってスパイが「隠密業人」とかモロバレすぎるんで名刺のアップでは爆笑できます。

 そうそう爆笑と言えば高島忠夫との名コンビ、マヌケな藤木悠(じゃあ映画の中でマヌケじゃない藤木悠を君は見たことがあるか?と聞かれても困りますが)の活躍を忘れるところでした。「キングコング対ゴジラ」の有島一郎レベルの職人芸はありませんがそよ風のような小ネタの連発が妙にニュートラルでステキです。

 アニメヲタクというジャンルが公に確立されていなかった1977年、再放送で空前の大ブームを巻き起こしたアニメ「宇宙戦艦ヤマト」よりもはるか昔、明治時代に生まれた「海底軍艦」は1963年の本作品公開後、「宇宙戦艦ヤマト」のパクリではないか?と悪評紛々の「惑星大戦争」というスペースオペラで再度復活したというのは冗談にしてもキツすぎます。

1996年09月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17