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モスラ(1961)


■公開:1961年
■制作:東宝
■監督:本多猪四郎
■助監:
■脚色:関沢新一
■原作:中村真一郎、福永武彦、堀田善衛
■撮影:小泉一
■音楽:古関裕而
■美術:北猛夫、安倍輝明
■特撮:円谷英二
■SFX:有川貞昌、富岡素敬、渡辺明、岸田九一郎
■合成:向山宏
■主演:ジェリー伊藤(筆者希望)
■寸評:東京・銀座の名物「木村屋」のコロネパンが突如巨大化!〔うそ)


 特撮ヲタクのみならずカルトな人気を得ている俳優の故・岸田森をして「モスラを超える特撮ファンタジー映画はない」と言わしめたのが本作品です。

 台風に遭遇して難破した船の船員たちは、ロシアみたいな名前のロリシカ国の水爆実験海域にあるインファント島の原住民・日劇ダンシングチームに助けてもらいます。無人島のはずなのに?そして生き残った乗組員・山本廉の話によればそこにはバービー人形くらいの小美人・ザ・ピーナッツがいるらしいのです。ようするにロリシカのリサーチがいいかげんだったわけですが、人が住んでるところであんな実験しちまって、おまけに原住民が全員無事だって言うんですから、これは大変だっていうことで早速、調査団が結成されます。

 学術目的のはずが、そこへ国際的なペテン師と噂のネルソン・ジェリー伊藤を追って、新聞記者の「すっぽんの善ちゃん」こと福田善一郎・フランキー堺が紛れ込んでいました。温厚な学者の中条信一・小泉博が原田博士・上原謙とラーフ隊長・オーディ・ワイアットにとりなしてくれたので事無きを得ましたが、ネルソンだけは密かに再上陸、原住民をぶち殺しただけでなく小美人を捕まえてひそかに日本へ持ち帰ってしまうのでした。

 歌の上手な小美人はインファント島の守り神であるモスラと交信できるチャネラーだったため、彼女たちを奪回せんとデカイ蛾の幼虫であるモスラは一路、日本を目指します。東京に上陸した幼虫は、自衛隊の爆撃なんか屁のカッパで、黙々とビルを破壊し高架をなぎ倒しながら進撃します。今回の自衛隊は大柄な河津清三郎が偉いさんでしたがやっぱり役立たずでした。

 ネルソンとその一味は小美人の超音波をシールドして海外へ空路逃亡。それを察知した幼虫は、飛行機を利用できないので、自前の飛行能力を得るために、東京タワーに繭を作って羽化します。飛行能力を得たモスラは今度はその巨大な羽のパワーで大災害を巻き起こしながら必死に小美人を追跡します。

 善悪の判断がつかないお子様モスラの一途さを尊重し、無事にインファント島へお帰りいただくために、中条と善ちゃんとその仲間の女性カメラマン・香川京子らの活躍でネルソンは追い詰められ警官隊に射殺されます。救出された小美人はモスラと一緒にインファント島へ帰っていきました。

 怪獣はある意味、人類の被害者であり地球の化身であるというテーマは、復活した後世の「モスラ」ではより鮮明です。制作当時は戦争の記憶がまだちらほら残っているのにもかかわらず、それを封印して高度経済成長へタッチ・アンド・ゴーな日本ですから、この映画にはインファント島のケバい酋長・小杉義男、この人だけは水爆を顔でモロに受けたのかと思いましたが、それはさておき「悪魔の火=原爆」に象徴される、人類が巻き越した最大の悪行への報い、傲慢さへの警鐘が限りなく平和的に描かれます。

 奥多摩のダムに出現した幼虫さんは別に悪気は無いのですが、巨大なダムを破壊してしまい下流の村を洪水に見舞わせてしまいます。避難する途中の橋上で大八車から転げ落ちた赤ん坊が!濁流は寸手のところまで迫っている!泣き叫ぶ赤ん坊を、間一髪でフランキー堺が助け出します。特撮だと、マスク見え見えのオプチカル合成だとわかっていてもフラさんの必死の体当たり演技に感動もひとしおです。

 フランキー堺@大芸(「だいげい」=大阪芸大、ちなみに私立)舞台芸術学科長。この人は若い頃、結構ワガママな人だったって聞きますが、東宝特撮映画ではまったく善人ですよね、いつも。「世界大戦争」や「わたしは貝になりたい」で見せたコミカルさとヒューマニズムがこの人の最大の持ち味です。おまけに本作品では上司が志村喬だし。

 幼虫モスラは、まるで「風の谷のナウシカ」に出てくるオームみたく(もちろん源流はモスラですけど)、猪突猛進します。青梅街道を通りちょうど初台のあたりで右へ転進、道玄坂方面より東急東横店と地下鉄の癖に高架を走る銀座線を破壊しつつ、渋谷駅を通過、246を通って青山の交差点を右折、飯倉の交差点をまたいで東京タワーへ到着、繭づくりを始めようとしてよじ登ったタワーの上部をへし折り、イキオイあまってずっこけるところが結果的にリアルでイイ感じです。

 ところで、こうした特撮映画ではうっかりシーンはつき物でしょうか?

 インファント島の原住民がモスラの卵を中心に踊るシーンに注目しましょう。中央やや右上方の後ろ向きの男性です。座ったまま頭を旋回させるところで「頭がはずれる」いや、ヅラが落下するんですね。ヅラの裏にあるアルミ板がキラリと光るんですけど、「どひゃー」という観客(私だけだが)の驚愕をよそに、彼は悠然とヅラを拾い上げ、かぶり直します。 カメラ来てないと思ったんでしょうかね。

 ロシア=東=悪、アメリカ=西=善、なんてわかりやすいんでしょうね、冷戦時代ってもう過去のことですがこんな風にあからさまだったんですね、当時は。ところで善良なアメリカ人(っていうかニューカークシティの刑事)のロバート・ダンハムと「宇宙怪獣ドゴラ」のイカす刑事さんを演じたダン・ユマは同じ人ですが、全然違う名前ですけどなにかあったんですかね?

 ザ・ピーナッツのモスラの歌。以下、歌詞の聞き書きを掲載しときます。なにせ歌詞カードみて(そんなのがあったら、の話ですが)書いたんじゃないので、いいかげんですけど一応載せておきます(JASRAC無視)。カラオケ屋でアカペラで一発かませばスターになれるかもしれませんよ!もちろんフリ付けも覚えましょうね。

モスラ〜ヤ モスラ〜
ドゥンガカサクヤン インドゥム〜
ルストウィラ〜ド ハンバハンバ〜ムヤン
ドゥンガパング〜ラダン ドゥンジュンカナ〜ム
カサクヤ〜ム

1996年09月02日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17