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妖怪大戦争


■公開:1968年
■制作:大映京都、大映(配給)
■監督:黒田義之
■脚本:吉田哲郎
■撮影:今井ひろし
■音楽:池野成
■美術:太田誠一、加藤茂
■主演:青山良彦
■寸評:大映京都制作なので(?)関西出身の妖怪が活躍する映画


 遥か南方の国、バビロニアのウル遺跡に墓泥棒が侵入します。そいつらがついうっかり蘇らせてしまったのが、古代の吸血妖怪ダイモン・橋本力。ダイモンの口は耳まで裂け、身体にはウロコみたいなのにびっしりと覆われていて、オマケに羽まで生えている不気味な怪物です。

 彼が空路(飛行能力があるので)、日本へ向かいます。ああ、なんてハタメイワクな。ゴジラとかガメラとかそんなもんに好かれても困りますが、日本人としては。

 さて、その頃、伊豆の浜辺で夜釣りを楽しんでいた代官、磯部兵庫・神田隆たまたまダイモンの日本上陸にぶち当たってしまったため、ダイモンに襲われてしまい、彼の大好物である人間の生き血をたんまりと吸われてしまっただけでなく肉体を乗っ取られてしまうのでした。

 人望のあった代官はその日から人が変わったように民百姓に圧政を強いるようになります。酒やタバコでドロドロになった血液よりもサラサラの子供の血のほうが好きなダイモンは、ヘルシー嗜好じゃないと数百年も生きてられないので、今度は村の子供たちをひっさらって来るように役人たちに命令します。父親の突然の変貌に、代官の娘、千絵・川崎あかねとその許婚の真山新八郎・青山良彦は気が狂ったんじゃないかと心配します。いや、そんなに心配しなくても神田さんならそういうキャラクターのほうが、とってもよくお似合いなのでは。

 代官の屋敷の庭の池に長年住みつづけていた河童・黒木現はダイモンの正体に気付いて立ち向かいますが相手は外国産、全然歯が立たず逃げ出して妖怪のお友達がいっぱいいる古寺に駆け込みます。するとそこへ、代官所の役人に追われた子供たち、茂市・渡辺幸保とお咲・神田真里が逃込んで来ます。

 最初は河童を怖がっていた子供たちですが、ところがこの河童がスゲーいい奴で仲間の妖怪たちと協力して役人を追っ払ってくれるのです。ろくろ首・毛利郁子、傘おばけ、二面女(前と後ろに顔があって、正面は美女だが裏面はコワイ)・行友圭子たちの弱点は、子供たちが首からぶらさげている「お守り」なので妖怪たちは子供に頼んでそれを懐へしまったもらうのでした。

 しかし西洋人であるダイモンには日本の神様もお手上げなのです。祈祷でダイモンをやっつけようとした高僧、大日坊・内田朝雄は黒焦げにされてしまいます。

 妖怪たちのリーダー格、油すましは、おでんのツミレに手足が生えてるような姿で関西弁です。ちなみに「油清汁(あぶらすまし)」とは煮汁のことで、煮て冷ました胡麻油に味噌と醤油を加えた蕎麦にかけて食べるものだそうです。なんだか美味しそうですが、おそばの下からあんなのが出てきたらイヤだなあ。

 ダイモンは代官の部下で真面目な川野佐平次・木村玄を吸血し鬼畜にします。忠僕の首に牙をたててちゅーちゅーと血を吸うシーンはシズル感があってすげーコワイです。とりあえず地元の仲間で古だぬきの雲外鏡・花村秀樹を先頭にダイモンに挑みますが、ろくろ首のおろくちゃんは伸ばした首をお団子結びにされてダメージ大、ほかのみんなもあえなく惨敗。このままでは日本妖怪の名折れであると、日本全国の妖怪が伊豆へ続々と集結します。

 雲霞のごとく押し寄せる日本古来の妖怪たちが、団結して凶悪かつ巨大化したダイモンに立ち向かう姿が凛々しくステキです。近鉄の「いてまえ」打線のような味わいですね。先述した河童、油すまし、以下、一つ目小僧、狸、鬼などのデザインも恐ろしげな中に愛敬があって秀逸です。

 一晩中、死力を尽くしての闘いは、油すましの知略により、新八郎の矢に傷ついた片目のもう片方の弱点を突いて、ついにダイモンは逃げ出します。しかし乗り移られた代官は死んでしまいました。

 ラスト、朝日が登る中、無数の妖怪たちが意気揚々と引き上げていくカットは幻のように美しいのです。本当にこんな奴らがいたらなあと思うと涙が出るくらい感激します。日本の妖怪ってもともとは自然界の精霊ですから、まさに日本の守り神なんですね。

 妖怪が活躍する特撮シーンとドラマのシーンは「大魔神」シリーズ同様トーンが統一されていて日本画のような情緒がでもって両者をつなぎとめ乖離させません。監督の黒田義之が両班の監督を兼任しているのが功を奏したようです。「電送人間」で見るものを不安な気持ちにさせた池野成の音楽も幻想的で素晴らしい余韻が残ります。

 「本所七不思議」の怪談ムードを尊重した「妖怪百物語」の発展的メルヘン増量バージョンのナレーターは、特殊メイクもカブリモノのなしでも妖怪キャラクターがイケてるかもしれない戸浦六宏

1996年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17