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網走番外地 南国の対決


■公開:1966年
■制作:東映東京、東映(配給)
■監督:石井輝男
■助監:森谷晁育
■原案:伊藤一
■脚本:石井輝男
■撮影:稲田喜一
■音楽:八木正生
■美術:藤田博
■主演:高倉健
■寸評:網走番外地なのになぜ南国?タイトルみて爆笑


 望郷編はともかく健さんが九州出身なので納得しましたが、今回は網走番外地なのに南国の対決、タイトル見てまず笑わせていただきました。網走番外地シリーズも6作目になると、「前科者の寅さん」かまたは「暴れん坊漫遊記」って感じです。

 親分の突然の訃報に不審を抱いた橘真一・高倉健が網走から日本列島を縦断して沖縄へ向かいます。船の上で手癖の悪い少年、一郎・町田政則と知り合った橘は現地で売春婦まがいのことをしているホステスの路子・三原葉子と少年が実の母子だと知り、二人を引きあわせようとしましたが、まぶたの母の濃い化粧に子供がびっくりこいた、っていうかそこいらへんは橘の教育的指導もあって最初のご対面は失敗します。

 おまけに、少年の実の父親って言うかようするに路子をはらませて捨てたクソオヤジが地元ヤクザのボスで橘の親分殺害の黒幕・河津清三郎だとわかってしまい橘はめずらしく困ってしまいますが、敵に雇われた殺し屋が真夏の沖縄で黒いスーツ着てるようなとぼけた兄ちゃん、南・吉田輝雄だったり、突然、鬼寅親分・嵐寛寿郎が現れたりで橘は無事に親分の敵を討ち、映画は大団円で劇終。

 母親が三原葉子で父親が河津清三郎ですか、それはたいそうな遺伝子ですね、ってそういう映画じゃないですが。

 男の友情が全面に押し出されるシリーズの中では珍しい母子物です。三原葉子がジャンボなお色気を抑えて切ない母親の心情を演じて泣かせます。

 吉田輝雄は黒いスーツでカチっと決めている相変わらずの超キザ演技ですが、やはりさすがに常夏の沖縄では暑苦しかったのか後半は白スーツ姿でした。吉田さんは橘暗殺の依頼を受けて付け回しついに船の上で対決することになります。健さんに好意をもっていた(ホモではない)吉田さんの発案で二人は八百長の喧嘩を演じて海に飛び込み危機を脱出します。

 もちろんチーム・網走も活躍します。

 「網走」の同期生であるホモの由利徹と、実生活ではともかく役柄の上ではホモではない千葉真一も敵側に雇われているんですが、ようするに前科持ちはまともな職にありつけないってことで、あっさり裏切ってイイところできっちり健さんをサポートします。とことん頭の悪そうな大原麗子とコンビを組んだ谷隼人もバカそうでとてもステキでした。

 石井輝男監督のシリーズの見どころはケレン味たっぷりの啖呵合戦(台詞まわしともいう)です。二人で海に飛び込んで敵の目をごまかした橘と南。「これからどうするんだ」と質問する橘に「そこまで考えるには時間が無さすぎたよ」と泳ぎながら答える南。

 笑っていいのかどーしたもんだか困りますが、あいかわらず吉田輝雄の周りに(だけ)は時空の歪みが発生しているとしか思えません。

 撃たれて虫の息の吉田さんが鬼虎親分の御大に「有名な鬼虎さんに看取ってもらえるなんて私は幸せ者です」と義理堅くしかも苦しそうに答えます。いつも台詞棒読みなんだからさあ死ぬときぐらい泣かせる芝居してみ!とか思いつつもやっぱり、、、時として掛け合い漫才にも通じるテンポとタイミングが石井監督の身上とは言え、ああ今回も最期まで笑かしてくれてありがとう!吉田さん。

 出演者一人一人に見せ場ありですが、なんといっても鬼虎親分はすごすぎます。神出鬼没とはまさにこの人のためにある言葉でしょう。なんせ鞍馬天狗ですから。健さんや関係者が絶体絶命!ってところで何故か木陰とかからヌーっと現われてピンチを救います。「なんであんたここにいるの?」なんて質問する奴が一人もいないのが不思議、ではありますが。

 母をたずねて三千里の少年スリを口でなく拳で説教する健さん。ケバい化粧をした三原葉子をバケモノ!と糾弾しますがスッピンで会いに来た三原を無言で許す。そんな浪花節があったかと思うと事態は一気にクライマックスの大喧嘩シーンとへ突入。

 夕日をバックに港の倉庫街でドスをぶんぶん振り回し敵をなぎ倒す健さん。船でやってきた健さんは再び逮捕され船で去っていくのであります。なんで飛行機使わないのかって?嫌いそうですよ、飛行機、石井監督が。

1996年07月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17