独立愚連隊西へ |
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■公開:1960年 |
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太平洋戦争の真っ最中の中国大陸、北支戦線。戦死公報後に生還した左文字隊は、神谷一等兵・堺左千夫、青山上等兵・大木正司、畑一等兵・中山豊、林兵長・若松明、山中兵長・高木弘ら、なかなか個性的な面子です。 やっかいもの扱いされて危険な最前線ばかりに送られますが、誰も死にません。隊長、左文字少尉・加山雄三と戸山軍曹・佐藤允たちは、霧の中で女ばかりの八路軍の輸送部隊と出くわして後を追っかけているうちに、八路軍の本隊に四方を囲まれてしまいます。お互いにけん制しあっているといつのまにか両軍ともマラソン状態になってしまいヘロヘロになります。八路軍の梁隊長・フランキー堺はどうせなら正々堂々と元気なときに戦おうと左文字少尉と平和に別れます。 愚連隊が到着した日本軍の守備隊では、留守番隊長の大江大尉・平田昭彦が、全滅した部隊とともに消息不明になった旗手の北原少尉・久保明と軍旗の捜索を師団本部から命じられていました。捜索隊はあえなく全滅してしまいます。 途中で友軍兵士に敵と間違われて軍服を川に捨ててしまったので、輸送トラックを襲撃して軍服をかっぱらったことが大江大尉にばれた左文字隊は全員、営倉へ。ただひとり、隊と別行動をとっていた神谷一等兵がニセ参謀に化けて守備隊にやってきます。慰安所を経営していた早川・中谷一郎の手引きで、左文字隊は脱獄に成功。軍旗奪回の手柄を立てて勲章を狙っている関曹長・山本廉も同行して、一行は八路軍の真っ只中へ進撃します。 前作「独立愚連隊」とは話のつながりはありません。公式には死んだことになっている、つまり戦場において何者にも守られないが自由である架空の小隊が類まれな精神力と度胸で困難を解決して再び、大陸の彼方に消えていくという、まるで御伽噺のような戦争映画です。中国軍兵士との派手な戦闘シーンもありますが、むしろ視点は敵軍でありながらもイデオロギーを超越した梁隊長の大人ぶりと、友軍であっても欲得に目がくらんだ人間は簡単に仲間を売るという醜さに重点が置かれています。 軍旗を守りぬいて自決しようとする北原少尉と中国人娘・田村まゆみの恋。衛生兵・江原達怡と看護婦・水野久美との残酷な結末。スパイとして潜入しながらも、人間らしさを失わなかった八路軍の情報将校・中丸忠雄の活躍。感傷的な味わいが薄まった分、娯楽映画として見所が増えたので、シリーズ映画のパート2はどうも、、という人でも、この2作目のほうが好きだという人は多いのではないでしょうか。 この映画のおいしいところを全部かっさらった感のあるフランキー堺演じる隊長ですが、冒頭の走りは本当に腹かかえて笑ってしまいました。ああ、こんな開放感があのとき、あの戦場にあったなんて絶対に思いませんが、映画なんて夢なんですからそういうの全然オッケーだと思うんですね。体型からしてすでに立派なコメディアンのフラさん(監督はこう呼んでいたそうです)が目いっぱい駈け抜けるそのシーンだけでもうこの映画は勝ったも同然だと思いました。 さて、ここで相変わらず観客を翻弄するのがスパイのくせして、最後にほんのちょっとだけ(あくまでも自分が犠牲にならない範囲で)改心して「本当はいい奴だったんだなあ」と客に思い込ませているのが、中丸忠雄です。前はド悪役で最期はハチの巣だったじゃん!どーせ最後に裏切るンでしょっ!という大半の客の先入観をうまく利用してるので、感動が5割増すというところでしょうか。なのに本人はそんなことお構いなしで、激戦中にタバコすったり、降参しない?なんてもちかけちゃってるんで、この映画が中丸さんの代表作だと言ってもいいんじゃないでしょうか。代表作なんて出場の多少じゃないですからね。 平田昭彦の隊長さんがなかなかキマってるのは、本当に兵学校出身だからでしょう。マジで戦時中は軍国少年だったらしいですよ。で、負けちゃったんで、もう二度と「官」と名のつく職業はイヤだというんで東宝の技術部に入社。後の奥さんである小柄な久我美子が、長身の池部良とラブシーンするとき箱馬を押さえてたこともあったそうです。このほか、時代劇でも上級武士の役が実にハマる人ですよね、なんせあの「セサミ・ストリート」に出てくるカウントドラキュラも真っ青のワシっ鼻のお公家さん顔ですもんね。 本作品は加山雄三の主役デビュー作でもあります。東宝の強面軍団に囲まれてンのに、すでに堂々とした立ち居振舞い。さすがサラブレッド。 (1996年08月10日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17