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太平洋奇跡の作戦 キスカ


■公開:1965年
■制作:東宝
■監督:丸山誠治
■助監:
■脚本:須崎勝弥
■撮影:西垣六郎
■音楽:団伊玖磨
■美術:北猛夫
■特撮:円谷英二、有川貞昌、富岡素敬、岸田九一郎、向山宏
■主演:三船敏郎
■寸評:上映終了後、拍手が湧いたという珍しい戦争映画


 米国領土であるアリューシャン列島のキスカとアッツの両島を占領した日本軍でしたが南方での戦局悪化にともない北方でも劣勢があきらかになってしまいます。すでに隣接するアッツ島の守備隊(陸軍)は玉砕してしまいました。

 太平洋戦争中、実際にあった作戦の経過を随所にドラマチックに描きます。軍令部総長・志村喬が召集した会議の席で軍令部赤司参謀・西村晃はキスカ玉砕を提案しますが、キスカはなんたって海軍が守備隊になってますんで、仲間を死なせてどうるんだ!という川島中将・山村聡の猛反対もあって救出することが決まります。救出作戦の指揮をとるのはの中将の指名による大抜擢の大村少将・三船敏郎。無線を封鎖して濃霧の中、発光信号だけで進軍する静寂に包まれた戦争映画です。

 キスカ島ではすでにあきらめムードが漂っていて、内地へむけた最後の手紙を積んだトラックまで寺井専任参謀・土屋嘉男の努力も空しく空襲で燃えてしまいます。日増しに激しくなる爆撃に、自分をかばってくれた佐野一曹・佐田豊が戦死するのを目の当たりにして絶望した負傷兵、加藤一水・黒部進が自爆してしまいます。彼の命を助けた工藤軍医長・平田昭彦(様)は空しさと怒りが込み上げてきて、これ以上犠牲者を出さないよう入院中の兵隊から手榴弾を取上げます。

 霧が出なければ艦隊は出撃できないのでイライラした将校たちは気象予報官の福本少尉・児玉清を問い詰めます。プレッシャーに負けた福本少尉を大村少将が励まします。

 潜水艦でひそかに島へ上陸しようとした国友参謀・中丸忠雄でしたが米軍に発見され艦は艦長・佐藤允、俵少尉・久保明をはじめとする乗員もろとも沈没してしまいます。やっとこさ守備隊の秋谷司令官・藤田進に救出作戦の計画を伝えた国友参謀でしたが、なかなか艦隊が到着しないので、守備隊の指揮が緩んじゃいます。サボっていた兵隊、中村上水・二瓶正也と阿部上水・阿知波信介を見た国友参謀は二人をぶっ飛ばします。ところが艦隊が途中で引き返したという情報がもたらされてしまい国友参謀はがっかりしますが、今度は中村と阿部が励ましてくれました。

 戦艦(駆逐艦が殆ど)がキスカ島の裏側にある暗礁を巧みに避けて進むシーンをはじめとする船の特撮に緊張感があって素晴らしいです。派手な戦闘シーンこそないですが「霧の艦隊」と賞賛されたこの作戦をよく再現していたと思います。

 脚本の須崎勝弥はアクション系の監督ですから、画面に漂う男臭さはお手の物です。男優しか興味が無い筆者としては大満足、無人島の話だから女優さんがゼロなんです。

 ほとんど史実にもとづいてストーリーはシリアスに進行しますがキスカに先に潜入する作戦参謀の国友の活躍がやけに目立ちます。実は映画では一人に集約されてるんですが当事者が記した書物によれば本当は数人の作戦参謀が分担して作戦を遂行していたそうです。それを一人でこなしているわけだから、そりゃスーパーマンみたいになりますわね。

 キスカの無線室を爆破して国友参謀と通信士・大前亘が逃げるシーンのエピソードをご紹介しましょう。中丸忠雄さんから直接伺ったところによると、御殿場のオープンセットが1stテイクで上手く爆発しなかったそうです。それでも時間無いからとりあえず本番で「いつ爆発するかわからない通信小屋のセットに入れと言われたときは生きた心地がしなかった。」とのことした。スタートのかけ声とともに二人とも真剣に全力で逃げて後ろでうまく爆発したんですが、破片がカメラ直前までバラバラと落ちてきて「あそこで巻き込まれていたら、、」と本当に怖かったそうです。

 キスカ島には、犬二匹(アイヌ犬らしいのと秋田犬)を残して日本軍が全員撤収した2ヵ月後米軍が上陸してくるんですが、はたして犬の運命はどうなったのでしょうか。公開当時は日本の戦争映画にはめずらしいハッピーエンドだったので拍手が起きたそうですが「南極物語」状態になった犬はどう?とりあえず人間様はいいとして犬はどうなったんだろう?と最後までそこんところがものすごく気がかりでした。アメリカ人は犬好きだから大丈夫かなあ、なんて。平和でボケててすいません。

1996年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17