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ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐


■公開:1960年
■制作:東宝
■監督:松林宗恵
■助監:
■脚本:橋本忍、国弘威雄
■撮影:山田一夫
■音楽:団伊玖磨
■美術:北猛夫、清水喜代志
■特撮:円谷英二、荒木秀三郎、有川貞昌
■主演:夏木陽介
■寸評:日米合作映画「ミッドウエイ」に流用された映画。


日米合作映画「ミッドウエイ」本編終了後、「フィルムの一部は『太平洋の嵐』のシーンを使用しております」のテロップが出た瞬間、場内の一部から拍手が沸き起こりました。特撮ファンの心意気ってことでしょうかね。ちなみに筆者が「ミッドウエイ」見たのは今はなき、テアトル東京(銀座)。この映画館は音響がすごかったんですよ、都内でシネラマはここだけだったし、ドルビーサウンドも「ミッドウエイ」なんかギンギンで、地下で「メアリーポピンズ」観てたらうるさくてしょうがなかったんですけどね。

さて、本題です。

海軍軍人にあこがれて兵学校へ行き、晴れて軍人となった夏木陽介がこの映画の主人公。

彼はハワイの真珠湾奇襲に参加。爆撃機の隊長・鶴田浩二、機銃を担当する西条康彦とともに、初陣に出撃した夏木陽介は純粋に戦争に勝利することを願っている。

まったくノーマークのまま、超低空で真珠湾へ侵入する戦闘機と爆撃機。そして、奇襲は大成功を収める。戦艦を沈めた部隊は「我、奇襲に成功せり」というメッセージを、空母・飛竜の司令官・三船敏郎へ打電する。

飛竜の主な乗員は、艦長・田崎潤、先任参謀・池部良、航海長・村上冬樹、飛行長・平田昭彦(様)、航空参謀・土屋嘉男、通信参謀・伊藤久哉さらに、深瀬大尉・小泉博、添島中尉・八色賢典、沢渡大尉・中丸忠雄

ものすごいオトコマエ揃いの空母だ。

ちなみに、艦隊の長官・河津清三が乗っている 航空母艦の赤城のほうは、参謀長・上原謙、航空参謀・三橋達也、戦務参謀・小林桂樹、通信参謀・宝田明である。

すごいぞ、帝国海軍!感動するところが違うような気もするが、まあいい。

その後、南方の戦線では出ると勝ちの連戦連勝、あまりに勝ちすぎること、そして最も怖い空母がまだ一隻も出てこないことに、冷静沈着な三船司令官は疑問を抱く。しかし、乗組員たちの士気は右肩上がり。宴会で「てるてる坊主」の歌を披露する隊員・中島春雄をはじめ、下士官たちもリラックスムードだ。

たいした敵がいなかった南方への戦力集中は大丈夫だったのか?と、連合艦隊の山本五十六・藤田進に訊ねた三船司令官に対して、藤田進は、まずは油の確保が目的であって、日本は工業力で圧倒的に米国に劣ること、この戦争が長期化すれば確実に敗戦すると判断し、事態の早期収拾を図ると言う。ちょっと安心した三船司令官だったが、しかし山本長官は戦死。戦争は継続されることになってしまった。

夏木陽介は意気揚々と、母・三益愛子が待つ故郷へ帰り、かねてより将来を誓った間柄だった上原美佐と仮祝言を挙げることになっていたが、すっかり準備も整って、校長先生・榎本健一も張り切っていたのに、夏木陽介には出撃命令が下る。

支度を整えて婚家へ向かう花嫁・上原美佐。田舎の婚礼らしく畔路を歩いてくると、軍装で花嫁の前に歩み寄り路上で握手を交わす。たった一瞬の夫婦。夏木陽介の後ろ姿を見送る上原美佐が奇蹟のように美しい。本作品は上原美佐の引退作品だ。

あー、泣いた!ここ!こういう人はたくさんいたんだろうね、でも最後のお別れができただけでもシアワセなのかも。あっという間に永遠の別れになってしまった恋人は、本当に数え切れないくらい。

太平洋戦争の天王山、ていうか結果的にだが日本がここから大負けを始めた、ミッドウエイ海戦。次々に落とされる友軍機。ついに鶴田隊長機も敵艦に体当たりして戦死する。夏木陽介の戦友・佐藤允も負傷するが、軍医・太刀川寛に手当てしてもらい命に別状無し。

ミッドウエイの地上基地を叩くか、これから出てくるかもしれない敵空母を叩くか、優先順位としては、三船司令官はあくまでも空母攻撃を考えて爆撃機に魚雷を搭載していたが、戦闘機が少ないので丸裸で出撃せねばならない。赤城の河津司令官は、将兵の犠牲を最小限に抑えることを優先し地上攻撃に決定。大急ぎで爆弾を付け替え終わったところへ、空母が付き添った大艦隊が接近中との報告が入り、またもや魚雷へ逆戻し、しかし時はすでに遅く、空母から敵機がバカスカ飛んで来る。

赤城が航行不能になり、司令部の命令で魚雷により沈没させる。

飛竜は未だ健在なり、と司令部へ打電する三船司令官。司令部からは「撤退」の命令は無し、ギリギリまで頑張ったが、ついに飛竜も止まってしまい総員に退艦命令。しかし退避できない乗員もたくさんいた。負傷した佐藤允、負傷兵達を見捨てられなかった太刀川寛は複雑だ。目の前にいる患者の命を助けられないから。その太刀川にニッコリ微笑む佐藤允。

あー、泣いた!ここ!機関室に閉じ込められてしまった機関長・小杉義男、以下の大勢の兵隊が状況がまったくわからないでじっと救助を待っている姿にも。

泳ぎに泳いで駆逐艦に収容された夏木陽介たちの目の前で、ボンボン燃えている飛竜めがけて魚雷が発射される。

あー、泣いた!ここ!夏木陽介と一緒に「あぁっ!」と心の中で叫んだよ。

内地へ戻れても、夏木陽介たちミッドウエイの生存者の存在は一切明らかにされず、国民には「海戦の勝利」と「被害は軽微」の大本営発表。夏木陽介の無事を信じる、上原美佐と三益愛子。そうだよ、あなたの夫と息子は「無事」なのに。連絡もダメ、敗戦の事実が知られるとマズイから。

そして彼らは、最後の沖縄戦線へ送られる。生きて帰ってもらっては困るということなのだ。本土の見収めに旋回しましょうという申し出もクールに否定する夏木陽介の絶望感が悲しすぎだ。

沈んだ飛竜と運命をともにした三船敏郎と田崎潤がすでに死んでるんだけど「こういう墓場が増えるのだろか」「もう増やしたくないなあ」と会話するシーン、あそこで後のハリウッド製超大作「タイタニック」のラスト思い出しちゃいましたよ。

日本の男優は「軍服姿が似合う」というが東宝は海軍モノが多かったですね。やっぱカーキ色の汗臭いのより、ネイビーブルーに金モールは颯爽として見えるから。それに海軍だから丸刈りじゃないしね。サラリーマン映画で角刈りが大挙して出てきたら驚くでしょ?だから営業上の理由もあったわけですね。

砧撮影所の特撮大プールの完成記念披露の席には本作品の出演者が軍服姿で勢揃いしたという、東宝のオールスター映画。 東宝の男優が大部屋ひっくるめて徹底的にフィーチャされてる。ただし喜劇系またはサラリーマン系は小林桂樹のみ。

2010年08月12日

【追記】2010年08月に再見し、全面的に改訂しました。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2010-08-12