新幹線大爆破 |
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■公開:1975年 |
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船員組合の余興に「てんぷくトリオ」が呼ばれなかったように、動労の慰安会に「脱線トリオ」がタブーだったように、不敗神話の新幹線をこともあろうに大爆破させようという本作品の製作にあたり、国鉄(当時)が全面的に協力拒否したため、新幹線のシーンは遠景撮影以外は全部、セットとミニアチュア(しかもちゃっちい)です。 沖田哲男・高倉健は工場が左前になって銀行にとられ、悲観した女房の靖子・宇都宮雅代には息子・菅原安人と無理心中させられそうになった挙句に逃げられます。売血のしすぎでヘロヘロだったところを沖田に拾われた大城浩・織田あきらは熱血青春馬鹿野郎なナイスガイ。古賀勝・山本圭は元ゲバ学生で前科あり。このような高度経済成長のオチコボレ三人組が博多行き新幹線ひかり109号に爆弾を仕掛けて乗客を人質にとり国鉄と政府に500万ドルを要求します。 爆弾は時速80キロで発火しもう一度、同じ速度まで減速すると爆発するというトンでもない代物です。何も知らずに東京駅を出発した運転士の青木・千葉真一、森本・小林稔侍のもとへ、国鉄公安本部長・渡辺文雄から脅迫の事実を知らされた運転指令室長、倉持・宇津井健が電話を入れます。名古屋を通過した新幹線の車内では鉄道警備隊の菊池・竜雷太と田代・福田豊土が乗客に事情を説明しますが案の定、大パニックに。そのさなか、妊婦・田坂都が産気づいてしまい、女医・藤田弓子の手当ての甲斐も無く子供は死産、母体は重態に陥ります。 警察庁の須永刑事部長・丹波哲郎、公安本部長、そして国鉄からは新幹線総局長・永井智雄と倉持が召集され緊急対策本部が設置されます。刑事課長の広田・久富惟晴、刑事の千田・青木義朗と長田・浜田晃たち東映東京の強面軍団はいつもは犯人役が多いのですが珍しく体制側の国家公務員役に張り切って、もうひとつの爆弾が仕掛けられた北海道で落ちていたタバコの包み紙から古賀の身元を割り出します。 身代金受け渡しの現場で大城を追い詰めたのはたまたま近所でジョギングしていた大学の柔道部員でした。いかつい大男に追い掛け回され金を谷川へ落としてしまいやっとこさバイクで逃げた大城はパトカーに追跡され電柱に激突死。数少ない手がかりをあっさりとチャラにしちゃう警察に対して、倉持はとうとうブチキレます。古賀の兄・田中邦衛の証言により都内で警察に発見された古賀は、刑事の長田に銃撃され重症を負い沖田の工場へ逃げ込みます。そこへ警察がパトランプをギンギンにぶん回して取り囲んだので追い詰められた古賀はダイナマイトを抱いて自爆しました。 残った沖田は無事に身代金を奪取して、爆弾の取り外し方を記した図面を喫茶店に置いてきますが、千田たち刑事が現場に向かう途中で、な、なんと偶然にもその喫茶店が火事で全焼してしまいます。 一人で焦りまくる倉持でしたが、ひかり号に乗ってる青木はさらに頭に血が上ってしまい思わず「アンタはいいよな!新幹線乗ってねえんだからよ!」と「仁義なき戦い」シリーズに出たときみたいな言葉の暴力で倉持を責めます。ドジな警察とやくざみたいな国鉄職員に板ばさみの倉持、なんて気の毒なんでしょう。そんなこんなで技術部の努力により、鉄橋を走行中に撮影した映像から爆弾の仕掛けられた位置が判明しますが、爆発をとめるためにはコードを切断しないと駄目でした。そのために車体に穴をあけることになり、酸素ボンベと溶接機が必要になります。 そこで新幹線をもう一台、ひかり109号に並走させて道具を受け渡すことになりました。前代未聞のアクロバットな技をやりとげる、もう一台の新幹線の運転士・千葉治郎(千葉真一の実弟)の顔を見て思わずニヤリと微笑む青木(て言うか千葉・兄)、全然意味不明です。一介の運転士なのに手馴れたもんだね、って感じで溶接機をあやつる青木の活躍で見事、コードの切断に成功。やれやれと思いきや、実はもうひとつ爆弾らしきものが!博多の市街地での爆発を避けるために緊急停止場所に指定された田園地帯のゴールは目前! さあ、どうなる!新幹線の乗客1500人の命! いやあ、ものすごい映画ですよね、なるほど泣く子も黙る動労時代の国鉄ですから協力拒否するはずですよ。孤軍奮闘の結果、青木をだまして爆弾があるかもしれないのに停止命令を出したことに責任を感じて辞意を表明した倉持を、国鉄も警察も誰一人として遺留しないんですよ。それどころか、刑事部長の丹波先生ったら、羽田空港で包囲した沖田をあっさりと射殺しちゃうんですよ、相手丸腰なのに。なんだ、こりゃ?これじゃあまるで自衛隊のクーデター隠蔽のために乗客見殺しにした「皇帝のいない八月」よりタチ悪いっすよね。度重なる警察の失態の口封じですもん、まるっきり。 はっ、もしかしてこの頃からそういうの当たり前だったの、かも? ほとんどすべての日本のサスペンス映画が決定的に駄目なところは、出来事にハラハラさせられるよりも、当事者の対応の馬鹿さかげんにイライラすることが多いからなんですけど、この映画なんてイライラするの通り越して呆れはてておまけに爆笑できるという実に珍しい娯楽サスペンス超大作です。 しかも、ですよ。射殺された健さんが棒切れのように倒れた次のカットで「特別出演・丹波哲郎」ってドカーンと出るんですよ画面いっぱいに。笑うしかないっすよ、健さん死んでんのに、もう爆笑。 列車に爆弾というプロットは「動脈列島」(同年9月公開、「新幹線大爆破」は7月公開)とほとんど同じ、原案の加藤阿礼って日本人作家の合体ペンネームらしいって聞いたんですけど、その一人が清水一行だったら原作同じですよね。て言うか、近藤正臣と山本圭、田宮二郎と久富惟晴、山村聡と志村喬(国鉄総裁)渡辺文雄は両方とも出てるし、キャラクターまでそっくりだしっ。 で、これオールスタア映画なんで、刑事役の北大路欣也が張り込み中にあっさりと犯人取り逃がしてすぐ引っ込んじゃうとか、電話交換嬢で志穂美悦子が出てくるとか、空港のカウンターに多岐川裕美が一瞬だけ映るとか、川地民夫が聞き込みに行くだけとか、クールスの舘ひろしのぱちもんみたいなバンドのリーダーが岩城滉一(ピラニア軍団のサテライトメンバー、当時)だとか、芸能レポーターが林ゆたかだとか、喫茶店のレジ嬢が藤浩子で、女性客の中に松平純子がいてこれはとんだところでポスト藤純子コンビ共演だなあ、とか、そのほか大勢の乗客の中に大映難民の伊達三郎がいるとか、もったいないったらありゃしない大盤振る舞いなので、よく見てね! 日本初のシュノーケルカメラ撮影というフレコミの特撮も、0系新幹線ののん気な顔でしっかり和めます。ちなみにこのシーンは後に巨大ロボットテレビドラマ「大鉄人ワンセブン」に使いまわされましたとさ。 (1996年07月26日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2012-08-18