四谷怪談 お岩の亡霊 |
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■公開:1969年 |
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日本映画史上、このジャンルの最高峰は新東宝の「東海道四谷怪談」という判定に異論を唱える人はいないでしょうが、お岩さんのナマっぽさとグロさにおいてはこの作品もなかなかです。「東海道〜」の清楚さと比較すると対極じゃないかと思うほどです。 民谷伊右衛門ってば「色悪」の代表的なキャラクターなので、大体、二枚目がやるわけです。女性の観客としては、それなりに少し同情できたり、苦悩する二枚目っていいわあ、てな見方をするんですけど、本作品は佐藤慶でしょう?こりゃもう絶対的に悪、どう考えてもド悪党な伊右衛門です。 お梅・真砂ちかこに一目ボレされるんだってヤラセ芝居だし。出世の足手まといだっていう理由でお岩の父・浜村純もあっさり斬っちゃうし。本作品では民谷家へ奉公に上がった下男の小平・水上保広が濡れ衣で戸板に打ち付けられて犠牲になります。 伊右衛門・佐藤慶は、虚弱で粗暴で助平でアブナイという画に描いたような悪党です。お岩・稲野和子は新劇の女優さんですが、童顔がそのまま大人になったような独特の雰囲気があるので、筆者は小学生の時「東海道四谷怪談」の若杉嘉津子を見てもコワイと思いませんでしたが、こっち見たときは夜一人でトイレに行けなくなりました(マジで)。 伊右衛門に横恋慕しすべての悲劇の原因となり自分も犠牲者になるお梅とその家族の描写や、宅悦・沢村宗之助の下世話感が生々しくてリアルです。特撮は戸板返しの場面などセットは、優美ですがマニアックと美意識のレベルにおいて「東海道〜」には一歩譲ります。SF色が足りない分は稲野の情念の濃ゆ〜い芝居で十二分にカバーできてますけども。 姉の非業の死を知らない妹、お袖・御影京子の元へお岩さんが亡霊となって姿を現わすところは、そこまでがとにかくオカルト映画みたいにただ恐かったのでその哀れさがグーンと増します。 そうそう特撮と言えば、顔崩れと髪すきのシーンは見せ場中の見せ場です。時間の経過とともに徐々に「崩れて」いく顔が時としてライトアップされてサービス過剰なくらいです。髪すきは「ブツッ、ブツブツッ」という音とともに毛穴から血が噴き出すんですけど何遍見ても、どの作品でもやっぱ、怖いし迫力満点。 あくまでもド悪役な伊右衛門に今一つ深みというものは感じられないですけど、稲野和子の熱演で生々しさとグロさ万点の作品になったと思われます。後は好みの問題でしょうね。 (1996年08月23日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2010-10-11