憲兵銃殺(憲兵と幽霊) |
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■公開:1958年 |
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CIAとかKGBとか「秘密警察」って奴はどうも、怪しい謎の組織ですよね。実態がよく分からないからいろいろと想像を掻き立ててくれますね。で、そういうモチーフをまるで悪魔か鬼のようにしちゃって「憲兵シリーズ」なんてのを作っちゃったんですね、この会社は。 太平洋戦争の最中、憲兵隊内でささやかな結婚式が行われます。幸せそうな新郎の伍長・中山昭二と新婦・久保菜穂子を、実は平素から三白眼ですが、冷ややかに見つめる中尉・天知茂。実は中尉は新婦に横恋慕してたのです。 ある日、中尉の部下、軍曹・村上不二夫が重要な機密書類を紛失してしまいます。中尉は伍長に罪を着せるというアイデアをすぐさま実行に移します。恋の怨みはコワイモンです。 真相究明のため、伍長だけでなく妻と母親まで拷問にかけられたので、ついに伍長は罪を認め、銃殺にされてしまいます。まんまとライバルを始末した中尉は親切ごかして未亡人に接近し、言葉巧みにその病弱な義理の母親を自殺に追い込んでから、未亡人を強姦し金を渡してあっさり棄ててしまうのです。え?なに?酷すぎません? 冷血漢でとことん根性の曲がったヤな奴、だけでなく、実は中尉は中国軍のスパイでもありました。 やがて大陸に渡った中尉のところへ、銃殺された伍長に瓜二つの弟・中山昭二(二役)が配属されて来ます。悪事が露見しそうになった中尉は、中国人の情婦と逃亡しようとしますが、伍長やその母親、さらには証拠隠滅のために殺害した部下の軍曹の亡霊に襲いかかられ遂に逮捕されてしまいます。 戦時中の憲兵隊による「拷問」の凄まじさと陰湿さは、日本の戦争史においてまさに「暗部」と呼ぶにふさわしいものだったんでしょうね。んなもん公式記録なんかに残らないですから想像するだけですけど。この映画における天知茂の憲兵はまさに最低な奴です。国家権力を背景に私利私欲、己の情念を満足させるためには「何でもやる」という軍人としても人間としても最悪です。 で、こういうのをやると天知茂は本当に上手いんですね。血も涙もないと言うか、そういうクールな役。なまじ顔が整った人がこういうのやるとどえらく陰惨なんですよね。 伍長の祝宴を中座した中尉が酔客に追われている女を助けます。追いすがられた女の着ていた毛皮のコートがパッと剥がれるとなんと銀ラメのセパレート水着姿なんです。これを三原葉子が演じるんです。わざわざ脱がなくてもいいのにね、と思いつつ、サービスサービスというところでしょうか。三原は天知と組んでいる中国人スパイの情婦です。以降もスケスケドレスなどのエロティックな姿をバンバン見せてくれます。意味不明なんですけども。 未亡人になってしまう久保菜穂子ですが、憲兵隊に連れて来られて頭から血をダラダラ流している中山昭二の目の前で拷問されるんですけどこれがまたエロいんです。スプリングがむき出しになったベッドに和服の前をはだけた状態で仰向けに縛られちゃう。これも意味不明なんですけどね。拷問なんでしょ?SMじゃないんでしょ?結果的には後者になってるんですね、これが。 天知茂は内地で秘密を知っている酒乱の部下を殺害、死体をバラバラにして軍用桑折に詰め込んじゃいます。コイツったら知性派のくせに実行犯でもあるんですね。証拠隠滅のために軍用桑折海上へ投棄するんですけど、これが海の藻屑とならずに回収されてしまったことから足がつくわけです。 夫を謀殺されて義母を自殺に追い込まれて、さらに自分は拷問されてもしぶとく生きていた久保菜穂子は大陸で天知茂と再会します。こんなことされたら普通は自殺しそうなもんですが久保菜穂子なら納得ですね。たくましく成長しちゃってるわけですよ、彼女。 あわてた天知が逃亡途中、迷い込んだ墓地のシーン。十字架に架けられ銃殺された中山昭二の恨めしそうな血まみれの顔、顔、顔。これが四方八方から天知茂に襲いかかるんですね。さらに自殺に追い込まれた母親が棺の中から蘇るし。海に棄てられた部下も棺桶の蓋をあけてむっくりと起き上がるし。生きてる人間なら殺せるけど、死んだ人間は殺せませんからね、ついに鬼畜憲兵の命運は尽きてしまいます。 (1996年08月23日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17