蟻地獄作戦 |
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■公開:1964年 |
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大戦末期の中国大陸。上官の無茶な命令を無視して軍籍を抹消された中尉の仲代達矢は八路軍との防衛線である橋の爆破を命じられます。そこで敵軍の進行を食い止めようというわけです。決死隊のメンバーに選ばれたのが部隊のハミダシ野郎(死語)ばかり。 軍律違反の兵隊、佐藤允、堺佐千夫、軍属の中丸忠雄、生真面目な兵隊、夏木陽介、どこか怪しい平田昭彦(様)。決死隊が途中で立ち寄った村では村長・柳谷寛、以下全員からもてなしを受けます。ですが、それは中国人ゲリラの罠でした。 脱出した決死隊は村長(実はゲリラの隊長)に道案内を強要します。夏木陽介が捕えた中国人の小年兵は女でした。負傷した仲間の治療のためにゲリラに化けて潜入した八路軍の陣地で仲代は昔の恋人・水野久美に出会います。ようやく橋にたどり着いたとき爆薬の雷管が紛失していました。 そこへ八路軍と敵対する中国人の部族が出現。仲代は一族の族長・三橋達也に八路軍を全滅させたらその武器一切を引き渡すことを条件に雷管をもらいます。今一歩で爆破成功というときに平田昭彦(様)が裏切ります。平田(様)は両親を日本軍に殺されていた八路軍のスパイでした。からくも橋の爆破に成功する決死隊。仲代達矢は見事生還しますが軍の規律に束縛されるのを嫌い、再び中国大陸へ去って行くのでした。 同じ材料でも料理人が代わるとこんなにもテイストが違うんだなあと確認できるのがこの「独立愚連隊シリーズ」。正確にはシリーズとは呼びにくいんですが出演者(とオープンセット)がほとんど同じなので。 岡本喜八監督版のオリジナルイメージだけをうまく頂戴して一般受けするエンターテイメント作品として会社の意向に沿ってサクっとまとめたって感じです。初期の作品が「中国人を面白半分に殺し過ぎる」と良識派から指摘されたのを受けて、戦闘の跡のおびただしい死体を見て中国人の少女が涙するシーンがあります。出演者やセットは流用ですが岡本喜八監督の作品に見られたような破天行なパワーは感じられないしカタルシスもないですね。仲代達也の極限状況でのキワモノ演技が見られるかと期待していたのでちょっと物足りなかったです。 佐藤允がやたらにトレードマークの「いいから、いいから」を連発するのはチトつらいですね。いつもこすっからいゲリラ役を得意としている沢村いき雄が大隊長の田崎潤を怒鳴りちらすシーンがありました。お、今度は偉い人に化けたのか?等と思っているとこれが実は本当に偉い人でした。 「独立愚連隊西へ」で素頓狂な声を上げて走り回っていた加藤春哉が本作でも決死隊の召集に部隊中をまわり、コワモテの中丸忠雄や脱走途中(トンネルを掘っている)の佐藤允、堺佐千夫らに思いきりコケにされるパターンも健在で楽しいんですがね。 負傷した中丸忠雄の手当をする中国人の医者が谷啓ですが、谷啓の登場があまりにも唐突で意味不明なのがちょいと残念でしたね。 中丸忠雄は大隊長の田崎潤と組んで強盗を働き、八路軍と取り引きするために少女を売り飛ばそうとし、それを止めに入った仲代の恋人である水野久美を誤って射殺、という悪事の限りを尽くしておいて最後に改心し、決死隊を救うために特攻攻撃を仕掛けて味を残します。善人面→裏切り→改心はすでにパターンでしたね。いつもはインテリジェンスあふれる平田昭彦(様)がショーコスギばりの装束で活躍するのがカコイイです。たまにはアグレッシヴな平田昭彦(様)の姿もイイですからね。 どうしてもその先輩がたの作品と比べちゃうでしょう?「独立愚連隊」「独立愚連隊西へ」「のら猫作戦」「山いぬ作戦」とかと。やっぱ岡本喜八、谷口千吉、福田純というラインに比べると線が細いんですよね、坪島監督のは。こういう男性的なのよりも後年の「ルパン三世 念力珍作戦」みたいなライトコメディに実力発揮したんでしょうから、ちょっと無理だったのかなあと。「シリーズのイメージをぶち壊す」よりかははるかに良かったんですけどね。 *「特攻ギャリソンゴリラ」:詐欺師、スリ、ナイフ投げの名人、金庫破りなどの犯罪者を集めた部隊が活躍する戦争アクションテレビドラマ。リック・ジェースンだけを目当てに見てたけど何かというとすぐ心理戦にもちこむ「コンバット」よりもやたらと派手なアクションが炸裂する「ギャリソンゴリラ」のほうが実は好きだった>筆者、あと「ラットパトロール」とかも好きです。 (1996年08月10日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-08-17