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あしたのジョー(実写版)


■公開:1970年
■制作:新国劇、松竹
■監督:長谷部安春
■脚本:馬場当
■原作:高森朝雄、ちばてつや
■撮影:上田宗男
■音楽:渡辺岳夫
■美術:佐谷晃能
■主演:石橋正次
■寸評:漫画を映画化するときには愛が必要だとわかる映画 。


 しかし世の中には間抜けな映画というのがたくさんあるもんですね。

 当時、人気絶頂で本来脇役だったはずの力石徹の葬儀が寺山修司の手によって実際に行われたくらいの爆発的なブームに便乗した映画だということを了解して見ないと、単なるお笑い映画になってしまうのでそういうところは割り引いてあげるのが大人というものです。

 孤児の矢吹ジョー・石橋正次が、元ボクサーで今は土方をしている片目の酔っ払い、丹下段平・辰巳柳太郎にボクシングの才能を見出され、少年院で永遠のライバル力石徹・亀石征一郎との出会いと別れを経て人間的に成長していく、ボクシング映画。

 漫画を実写映画にして成功した映画って、ここ日本ではあるんでしょうか?アメリカのテレビシリーズ「バットマン」や「スーパーマン」なんてのも同様に原作の付録程度のシロモノなわけですから、こうしてブームも原作もごく一部のマニアックな人しかわかんなくなっちゃった後年の人には、漫画の擬音がそのまんま出てくるとか、マウスピースがスロー映像で飛ぶとことか、もう笑うしかないんじゃないかと思いますが、この「あしたのジョー」は映画だけじゃなくて舞台劇になってんですよね。

 石橋正次も当事は青春ドラマで粗暴で不良だけど根はイイ奴という、いねえよそんな奴系のポジションで活躍していた人気歌手ですから主役のチョイスとしては至極まっとうです。力石徹が名前が似ている亀石征一郎というのはたぶん、顔が似てるからというわかりやすい理由による登用ですけど、身体はできてないし、せめて減量シーンでは「レイジングブル」のデ・ニーロ見習え!って感じで原作ファンからはブーイングの嵐であったと推察されます。

 丹下段平に新国劇の重鎮、辰巳柳太郎ってのもどうかと思いますが、まあ責任上やむなしというのは理解できますが、でもねえチャンバラしてないと単なるホームレスのジジイみたいですからねえ、辰巳さんじゃあ。

 20世紀の思い出に見ておくと、ネタに使える映画の一つでしょう。

1996年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17