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キャット・ピープルの呪い(The Cures of The Cat People)

□年度:1944
□製作:RKOラジオピクチャーズ
□製作:ヴァル・リュートン
□脚本:デウィット・ボディーン
□監督:ゲンター・フリッチ
□音楽:ロイ・ウェッブ
□出演:シモーネ・シモン、アン・カーター、ケント・スミス、ジェーン・ランドルフ、ジュリー・ディーン、エリザベス・ラッセル、サー・ランセロット


★ネタバレしてますよ

この映画は『キャットピープル』(1941)の続編である。なので「イレーネ」という言葉唐突に出てきても当時の観客はピンときたわけであるし前作で豹に変身した美女シモーネ・シモンが登場することで期待がいや増したことであろう。

ちなみに呪いだと思っているのは気の毒な生き残りのケント・スミスであってドロドロしたシーンを期待しているとトンだ肩すかしなので気をつけよう。

友達ができにくい少女アン・カーターはお父さんケント・スミスと再婚相手のジェーン・ランドルフにとってやや心配である。しかし学校の先生はよくできた人なのでちょっとほかの子供と違うだけだと言うがお父さんは気が気ではない。

なぜならお父さんの前妻シモーネ・シモンは感極まると大型のネコ科である黒豹に変身して相手を喰い殺したのである。お父さんは難を逃れて再婚していたがシモーネにも未練があった。

アンは誕生日に友達を招待する約束をしていたが妖精が届けてくれると信じて庭の木に招待状を投函してしまったのでさびしいお誕生会になっただけでなくスポイルされたと信じた友達たちにもシカトされてしまう。さびしいアンは古びた屋敷で足の不自由な元女優ジュリー・ディーンから指輪をもらう。

この指輪が願いを叶える指輪だといいね、と使用人サー・ランセロットから聞いたアンは「友達ができますように」とお祈りしてしまう。

で、ここから先は亡霊なのかどうか不明だが死んだはずのシモーネ・シモンが庭に現れてアンにしか見えない友達になる。彼女はアンを心から愛しているようで、ていうかアンの都合の良いお友達であるから困ったときには励ましてくれるし用がない時は出てこない。

『セサミストリート』でビッグバードと子供たちにしか見えなかったスナフラパガス(スナッフィー)みたいなもんだと思えばよい。大人たちはビッグバードの空想上の友達だと思っただけだが、アンのお父さんは妄想癖がイレーネの記憶とシンクロしてしまいアンの言葉をウソだと信じたい気持ちも手伝ってついつい子供の証言を全面否定して叱りつけてしまう。

このまま成長したら将来的には人喰い黒豹になるのではないか?というお父さんのトラウマである。

この映画に登場するのは親の理解を得られない二人の子供である。一人がアン、もう一人は少々ボケが入った母親に死んだと思われてしまっている娘エリザベス・ラッセルである。

アンはシモーネの後を追ってクリスマスの雪の中を駆けだしてしまい迷子になる。 物語の舞台になっている場所は首なし男爵の亡霊で有名なスリーピーホロウなのでアンは怖くてしかたない。

自動車のチェーンの音が馬の蹄の音に聞こえてやみくもに逃げ回っているうちに例の屋敷に駆け込んだが高齢だったジュリーが急死してしまいかねてより母親に可愛がられていたアンに嫉妬したエリザベスは彼女を殺そうとしてしまうのだが怯える小さな子供の姿に母性本能をめざめさせたエリザベスはアンを抱きしめる。

子供を愛していない親はいないと気がついたエリザベスはアンによって救われ、アンは学校の先生と奥さんによって子供の話を誠実に訊くことを誓ってアンを抱き寄せると安心したアンの目にはもうシモーネは映らないのである。

シモーネシモンの顔を知らないアンが見える友達がなぜ彼女なのかはうまくぼかしてあってお父さんが捨てきれなかったシモーネの写真を見て美人だからこの人がいいなと偶然思ったのかそれともやはり元夫を心配したシモーネの霊魂がアンの前に現れたのか微妙になっている。

子供の心の成長と親の愛情に心霊現象をブレンドさせた幻想的で心温まる作品である。 子役のアン・カーターが素晴らしくライティングによっては不気味なシルエットを浮かべたりするので彼女の功労は大である。錯乱しかかったエリザベスの顔にシモーネの顔がオーバーラップするのもまたエリザベスの魔の手からアンを救おうとしたシモーネのしわざなのかアンが恐怖心を打ち消すために相手を友達だと思おうとしたのか、このあたりも味があって好きだな。

(2014/01/05)

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