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日本ゼロ地帯 夜を狙え


■公開:1966年
■制作:松竹
■製作:大月宏、杉崎重美
■監督:石井輝男
■脚本:石井輝男
■撮影:平瀬静雄
■音楽:八木正生
■美術:森田郷平
■主演:吉田輝雄(筆者断定)
■寸評:松竹カラーもどこ吹く風、石井輝男アクションここにあり。


 関東最大の売春組織のボス、阿川・山茶花究のキャリアはとても長い。

 戦前の東京。高利の借金のカタに連れてきた女たちをこき使い赤線のボスをしていた阿川のところにいた売春婦、衆木千代・香山美子にはまだ学生だった橘・吉田輝雄という恋人がいた。千代の弟、直也・竹脇無我が田舎から出て来たので、千代は牛太郎の邦さん・田中邦衛の計らいで橘と駆け落ちしようとするが途中で捕まってしまう。

 箱政親分・嵐寛寿郎とそこの若い衆・藤岡弘に助けられた橘と千代だったが、半年後、千代は阿川の手下、宍戸・待田京介、杉・藤木孝らによって連れ戻され、橘は学徒動員で出征する。終戦後、復員した橘の前に有楽町のガード下にパンパンになった千代が現れた。千代は橘に「本当に好きだったのはあなただけ」と告白して走ってきた進駐軍のジープに突進して死んだ。

 時は流れて同じ東京の有楽町。直也は関西の大手売春組織の幹部と名乗って阿川の情婦、ルミ・三原葉子と知り合う。橘は阿川の部下となっていた。箱政の養女、敏子・朱麗敏も毒牙にかけようとした阿川に対してついに橘は千代の復讐を開始する。直也は阿川に捕らえられた。

 この映画の主演が竹脇無我だということを、見終わった客の何人が記憶するのかはなはだ疑問である。

 「望郷と掟」といい本作品といい竹脇無我の、少なくとも後にテレビの時代劇でお茶の間のアイドル化(対象は高齢者だが)する竹脇無我のその後の人生を知ってしまった現代の観客は作品のアンマッチさに呆れるかもしれない。

 っつうか、誰がどう見たって吉田輝雄が主役じゃん?目立つじゃん?カッコイイじゃん?なのだ。八頭身の長身モデル体型で彫りの深い印象的なマスクの吉田輝雄に見下ろされる竹脇無我はどう見てもセンが細くひ弱な坊やという感じでハンデ背負いまくりだし、特に三原葉子のジャンボなお色気には圧倒されるばかりで全然目立たない。どうせ圧倒されるなら輝雄ちゃんみたいに「何も考えていない素直さ」で切りぬける、みたいなところがないとかなりツライもんがあるわけよ。

 竹脇無我をスタアダムへ上り詰めさせようという思惑はわかるし、本人も精一杯な誠実さはヒシヒシ伝わるんだけど、石井輝男監督ってそういうの気にしないイケイケなタイプだからすっかり置き去りだ。

 学徒動員の神宮スタジアムでの行進シーンは実写。そこにハメコミで学生服の吉田輝雄が出てくる。その吉田輝雄が戦後、山茶花究の事務所に乗りこむところなんかまるで「女王蜂と大学の竜」そのまんま。新東宝と東映で一花咲かせた石井輝男テイストが松竹でも、擬斗のまったり感は目をつむるとして、イキイキと炸裂しているので監督の熱烈信者はとても喜ばしい、ただ竹脇無我だけが損してるって感じだ。

 ラストの壮絶な撃ち合いシーンも吉田輝雄のみひたすらカッコ良く、おまけに鬼寅さんに最期を看取ってもらったりなんかして「網走番外地・南国の対決」思い出した人多数、さらに言えば吉田輝雄の役名が橘なんでよけにややこしい?

 網走チームからは、お人よしの行商人・砂塚秀夫、あやしすぎる産婦人科医・由利徹がきっちりとコメディリリーフを果たす。

2002年03月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16